亀戸の高齢者を元気にする運動特化型のデイサービス「あづま家」と「3Po(さんぽ)」。
3Poは要支援や自立の方が対象で、短時間でも運動効果が得られる“予防特化型”のデイサービスとして、地域の健康づくりを支えています。代表取締役の和田龍吉さん、ケア事業部部長 統括管理者の田所伸啓さんは、「デイサービスはまだ早い」「自分はまだ元気」と思っている方にこそ、元気なうちに、歩けるうちに通ってほしいとおっしゃいます。
ふたつのデイサービスについて、お話を伺いました。
<代表取締役 和田龍吉さん>
――亀戸であづま家デイサービスを2カ所運営されていますが、なぜ新しいデイサービス3Po(さんぽ)を立ち上げようと思ったのですか?
代表取締役 和田さん:いまの介護保険制度は重度者を優遇しています。このままでは、要支援者や事業対象者の居場所が社会からなくなってしまうという危機感がありました。
デイサービスは、より要介護度の重い人を受け入れた方が利益になる仕組みです。そのため、要支援者を受け入れないデイサービスも増えています。
そうすると、要支援の方は外出の機会がなくなり、引きこもりになり、そして歩けなくなってしまう。そういった事態が実際に起きているのです。
要支援者・事業対象者が気軽に通える場所を作りたい。受け皿になりたい。そのような思いで3Poを立ち上げました。
3Poは“デイサービスの卒業先”としても使っていただきたいと思っています。介護保険を卒業すると行き場がなくなってしまい、家に引きこもってまた介護が必要になってしまう、という悪循環が生まれがちです。
3Poなら、介護保険を使わなくても、要支援の方と同様の運動支援を受けられるので、“デイサービスの卒業先”としてもご活用いただけると思いました。
また、3Poは介護保険を卒業した方の“次のステージ”としてだけでなく、「まだ介護保険は必要ないけれど、最近なんとなく足元が不安」「運動不足を感じているけど若者向けのジムには通いづらい」といった方の“入り口”としても利用していただきたいと考えています。
元気なうちに、歩けるうちに、無理なく通える場所。3Poなら、介護保険を使わなくても、専門家から運動支援を受けられます。
「デイサービスはまだ早い」と思っている方にこそ、気軽な“健康習慣の場”としてご活用いただけたら嬉しいですね。
<3Po 亀戸中央店>
――3Poにはどのような特徴がありますか?
統括管理者 田所さん:3Poは要支援の方と自費でご利用いただく方を対象とした“予防特化型”のデイサービスです。特に下肢の筋力を鍛えるためのサーキットトレーニングを中心に構成されており、効果的かつ安全に体を動かしていただけます。
運動の強度は高くありませんが、最先端トレーニングを取り入れているため、100分という短い時間でしっかりと運動効果を得られます。実は、特別な環境下でトレーニングすると運動効果が3倍になると言われているんです。
この“特別な環境”とは、富士山の5合目ほどの空気に近い状態で、呼吸そのものが体に適度な刺激を与え、運動効果を自然に高めることができます。もちろん安全面にも十分に配慮しており、どなたでも安心して取り組める内容となっています。
代表取締役 和田さん:施設内は“いかにもデイサービス”という印象を取り除き、スタイリッシュで明るく、ジムのような空間に設計しました。
「体操教室に行く」「ちょっと散歩がてら寄る」といった軽やかな感覚で、誰もが気負わず通える場所を目指しています。
また、送迎車にはデイサービス名を入れていません。これは、周囲に“デイサービスを利用している”と知られたくない方への配慮です。ご家族や地域の方にも気兼ねなくご利用いただけるよう、細やかな工夫を大切にしています。
――3Poでは自費で利用する方も送迎してもらえるのですか?
代表取締役 和田さん:はい、もちろんです。介護保険を卒業したからといって、すぐに一人で外出できるようになるわけではありません。実際には、“卒業”というよりも“制度から外されてしまった”と感じ、不安や戸惑いを抱える方も少なくありません。
足元に不安があり、一人で出かけるのが怖い、外出をためらってしまう――そんな方が再び家に引きこもることのないように、私たちは自費利用の方にも送迎を続けています。
“通えること”そのものが大きな安心につながります。だからこそ、要支援の方も、自費利用の方も、誰もが気軽に、まるで“散歩”(3Po)に出かけるような感覚で無理なく通える環境を整えることが、継続の第一歩になると私たちは考えています。
ただし、介護利用の時間とは別枠で、一般の方向けに夜間営業している「リカバリーフィットネスサロン3Po」(一般向けの月会員制)については、送迎サービスを行っていません。
こちらは、働く世代や日中に時間が取りにくい方にも通っていただけるよう、夜間帯に開放している新しいフィットネスサロン空間です。
<あづま家デイサービス 亀戸>
――3Poとあづま家デイサービスはどちらもデイサービスですが、どのような違いがあるのですか?
代表取締役 和田さん:あづま家デイサービスは亀戸に2カ所ありますが、そのうちJR亀戸駅近くにあるあづま家の2階部分に、3Poを新たに立ち上げました。
あづま家デイサービスは、要介護と要支援の方にご利用いただけます。一方で3Poは要支援の方と自費でご利用いただく方が対象です。
また、利用時間はあづま家デイサービスでは3時間、3Poでは100分となっています。3Poの方が時間は短いですが、最先端トレーニングによってしっかりと運動効果を得られます。
統括管理者 田所さん:運動の内容は、どちらのデイサービスも下肢を鍛えるトレーニングがメインです。高齢になって自分の足で歩けなくなり、ベッドで過ごす時間が長くなると、身体機能や認知機能がガクンと落ちてしまいます。それを防ぐためには下肢を鍛えることが重要になります。
どちらも複数のトレーニング機器やリラクゼーション機器を10分ごとにまわるサーキットトレーニングを取り入れていて、各種目を1周ぐるっと回ったら終了です。
バイクやリハビリマシーンなどのトレーニング機器のほか、空気圧によって足をマッサージする機器、遠赤外線を使った足湯などもご使用いただきます。
マッサージ機器などで血流がよくなると、体を動かしやすくなって運動効果がさらに高まるため、運動とリラクゼーションの種目をバランスよく取り入れています。
――3Poを利用すると、どのような効果がありますか?
統括管理者 田所さん:階段を上ったときのしんどさが減った方、普段トレーニングをしている方の限界値が上がった方などいらっしゃいます。3カ月ぐらい継続していただくと、「なんだか楽になってきた」と感じられる方が多いと思います。
代表取締役 和田さん:「よく眠れるようになった」という感想も多いですね。トレーニングでほどよく疲れるので、それまで夜眠れなかった方でも、すっと眠れて目覚めもいいようです。
3Poとあづま家では、気づかないうちに運動してもらう仕組みを取り入れています。たとえば、靴の脱ぎ履きを何度かしたり、機器を使うためにバーをまたいだり。種目を変えるごとに立ったり座ったりもします。
そうやって意識しない運動を重ねているので、ほどよく疲労がたまります。「よく眠れるようになった」というお声は本当に多いですね。
<ケア事業部部長 統括管理者 田所伸啓さん>
――3Poとあづま家デイサービスには、食事や入浴などの介護サービスはないのですか?
統括管理者 田所さん:運動前には必ずバイタルチェックをしていますが、3時間という短い時間で効果的に運動していただきたいので、食事や入浴などのサービスはありません。
私たちはできる限りご利用者様を介護者扱いしません。ご家族やケアマネジャーから「なんで?あなたたちは介護スタッフでしょ」と言われたこともありますが、私たちが見ているのはその方の未来です。
もし私たちが手伝い過ぎてしまうと、その方はそれを「できないこと」と認識してしまいます。そうすると、自分でできることがどんどん少なくなり、身体機能が落ちてしまいます。そのため、できることは極力自分でやっていただくというスタンスです。
ただ、歩行時などには必ずスタッフがついて、ご利用者様の安全は確保しています。
――今後、3Poでの効果を検証するご予定もあるそうですね。
代表取締役 和田さん:低酸素の環境下で運動することの効果について、しっかりとエビデンスをとる予定です。高知リハビリテーション専門職大学 片山教授と連携し、認知症予防の効果検証をします。
海外の複数の研究論文では、低酸素環境下での軽運動が脳活動を改善し、認知症の予防につながる可能性が示唆されています。
ただ、日本国内ではその有効性について明確なエビデンスが不足しています。認知機能のほか、筋力、血糖値などのデータを検証し、しっかりとした裏付けを示したいと思っています。
今後はこの研究結果を基に、3Poを全国展開可能なモデルとして確立していきたいと考えています。
3Poには、デイサービスが要支援者を受け入れても経営が成り立つ仕組みがあります。将来的には、このモデルを取り入れる事業者が増えて、要支援者が運動できる場所がもっと増えたら嬉しいですね。
――最後に3Poの利用を検討している方にメッセージをお願いします。
代表取締役 和田さん:3Poには、3つのPoが含まれています。歩けなくなった、身体が悪いなどと諦めずに、「まだまだ歩けるぞ!」とご自分のポテンシャル(Potential)に気づいていただきたい。パワフル(Powerful)な毎日、イキイキとした毎日を送っていただきたい。そして、ポジティブ(Positive)な気持ちで取り組んでいただきたい。そんな思いを込めています。
3Poには、短時間でも運動とリラクゼーションをしっかりできる仕組みがあります。気軽に運動できるので運動が苦手な方も取り組みやすく、趣味活動や通院などに忙しい方でも送迎つきでサクッと通っていただけます。介護施設はまだまだ早いという方にこそおすすめです。
介護予防といえば3Po、要支援といえば3Po、介護保険を卒業しても通える場所といえば3Po。そう認識してもらえる存在を目指していきたいですね。
デイサービスはまだ早いと思っている方、私はまだまだ元気だという方、最近つまずきやすくなった方、外出の機会が少なくなった方など、ぜひお気軽にお越しいただきたいです。
自らの意思で「ここに通いたい!」と思っていただけるデイサービスになれたら嬉しいですね。
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