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男性高齢者を外出に導く!引きこもり改善方法のコツ

男性高齢者を外出に導く!引きこもり改善方法のコツ男性高齢者を外出に導く!引きこもり改善方法のコツ
はーとん

引きこもりの高齢者は少なくないよね……。今回は、引きこもりから脱却したある男性の事例を紹介するっポ。
紹介するのは、主任ケアマネ・看護師資格保有者の寺岡さんだよ。

祖父

わたしももう老人だから他人事じゃないな……。

はーとん

デイサービスの利用がカギになったみたいだっポ!

自宅に引きこもっていた78歳のマサルさん

はーとん

今回紹介するのは、78歳のマサルさん(仮名)。最愛の妻に先立たれて抑うつ状態に陥ったマサルさんが、立ち直って自分らしい生活を取り戻した事例だっポ。

マサルさんは78歳で足が不自由なため、要介護2の認定を受けています。3か月前に最愛の妻を病気で亡くしました。以前は会社役員をされており、部下や家族に慕われる存在で社交的な性格だったようです。

しかし、妻と死別後は抑うつ状態となり自宅に引きこもるように。日常生活が何とか送れているような状況でした。そんなマサルさんを周囲が心配してデイサービスに行ってみるよう勧めても、本人はまったく乗り気ではありません。

それまでに2度デイサービスの体験利用をしましたが、そのたびに理由をつけて断るというような状況です。それでも同居の息子さんに遠慮してか、3回目の体験利用に同意をされました。
しかし、周囲とのコミュニケーションにも消極的で、「今回も楽しめないのでは」と予想していました。デイサービス側にはこれまでの経緯をお伝えして、決して無理強いなどはしないようにお願いをしておきました。

3回目のデイサービス体験利用で「引きこもり脱却」

3回目の体験利用の当日、マサルさんはそのデイサービスでよく話をされていました。そのやり取りを聞いていると、マサルさんがデイサービスの職員にいろいろなことを教えるようなスタイルで会話をしています。若い介護職員の質問に得意げに答えて、あれこれ教えていました。

いつしか何気ない会話から趣味の話になり、マサルさんは以前、絵手紙を継続してやっていたことがわかりました。すると職員が「絵手紙に興味があるので他の利用者も含めて教えてほしい」と頼んだのです。

その日の体験利用は2回目までとは違い、非常に気に入ったようです。結局、そのデイサービスを利用したいと言われ、引きこもりからの脱却につながりました。

高齢者の引きこもり原因は「老人性うつ」かも

マサルさんの世代は、男性が一家の大黒柱として責任を果たして妻は家を守る、という環境で生きてきた人が多いものです。自分を支えてくれた妻に先立たれると、残された男性は生きる気力をなくしてしまうケースも非常に多く目にします。
そうなると老人性うつと呼ばれる抑うつ状態に陥り、精神面だけでなく身体面にも悪影響を及ぼします。それが引きこもりにつながることもあるのです。

老人性うつとは高齢者に発症するうつ病のことで、認知症の症状とも間違えられやすく気付かないうちに重症化してしまうケースも。老人性うつの特徴としては、抑うつ的な症状の代わりに認知機能の低下や身体的な不調を訴えることもあります。

老人性うつを発症する原因は、配偶者や身近な人が亡くなったり、加齢によって身体が思うように動かなくなったり、病気を発症して健康状態に変化が見られたりするなどが挙げられます。これらの喪失感が高齢者の引きこもりの要因になることも少なくありません。

「老人性うつ」を防いで引きこもりの改善へ

環境や身体状況の変化が見られたときには、認知機能の低下がないかをチェックします。また、継続する頭重感や吐き気、肩こりなども軽視しないように留意し、老人性うつを思わせるような症状が出現していないかにも注意が必要となります。

老人性うつは適切な治療により治すことができるため、気になる症状がある場合には専門医への受診を進めるとともに、言葉かけや出かける場所を工夫するようにしましょう。
それに加えて、生きがいや趣味などのある日常生活を送れるようにすることが、老人性うつを回避します。

そして、いつまでも健康的な生活を継続できるように周囲の人が気をつけてあげることが、高齢者の引きこもり予防のコツになります。

引きこもりを回避するなら、その人の興味を引き出す

マサルさんのケースでは、ご本人の興味を引き出せたことが引きこもり脱出のきっかけになりました。体験利用の次のデイサービス利用時には、早速絵手紙に必要な用具を自宅からたくさん持参して、他の利用者に教える先生役を買って出られたそうです。
「家で準備をしている表情は、昔の自分を思い出して自信を取り戻したようだった」と、息子さんもうれしそうに当時の様子を振り返っておられました。

マサルさんの場合は、「もともと会社の役員をしていて部下を指導する立場であった」「人に教えることが得意」「絵手紙が趣味」、この3つを組み合わせたことで自分らしさを取り戻せました。介護職員がこの3つに気付けたことで、マサルさんの心情に変化が見られたのです。

マサルさんのように自分で何かをしたい人には、デイサービスなどの受け身のサービスは好まれません。このような男性の高齢者の場合には、人に何かを教えたり、自分に興味がある歴史や写真などに関して主体的に調べたりする活動が、非常に好まれやすい傾向にあります。

デイサービス以外にも、ボランティアで教えに行ったりサークルなどの活動ができたりする場を探すと良いでしょう。その人が主体となるような場所や役割を提供することが、引きこもりを回避するための対策になります。

マサルさんはデイサービスへの通いのなかで楽しみを見つけたり、他の利用者との会話を楽しめるようになり、現在もデイサービスの利用を継続中です。新たな発見により、妻のいない新しい人生を前向きにとらえられるようになっています。

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著者:寺岡 純子

著者の画像

著者:寺岡 純子

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合同会社カサージュ代表
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、終活カウンセラー1級
8年間の臨床看護を経て、介護保険の開始に伴い介護業界へ転向。全国展開する大手介護事業者で部長職としてさまざまな介護サービスの運営・人材育成を経験する。医療・介護の幅広い知識と経験を多くの介護事業者に届けたいとの思いから独立。現場・事業者・利用者の視点に立ち、介護に特化した研修や事業者・介護者のサポートを行っている。

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