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介護施設での新型コロナウイルス対策と課題【介護の研修講師が解説】

介護施設での新型コロナウイルス対策と課題【介護の研修講師が解説】介護施設での新型コロナウイルス対策と課題【介護の研修講師が解説】

新型コロナウイルスの感染者が増加し、連日ニュースで報道されています。先日は介護老人保健施設(老健)職員の感染が明るみになり、介護関係者や高齢者を抱えるご家族は心配が尽きないと思います。
私は介護の研修講師として活動しており、毎日いろいろな介護施設にお伺いしています。そこで見聞きしたことを踏まえて、施設の新型コロナウイルス対策の現状と今後の課題を解説していきます。

新型コロナウイルスの発生当初における介護施設の対応

新型コロナウイルスの感染者が出始めた当初は、発生者数や発生場所の報道が連日見受けられていました。そんななか、私がとある特別養護老人ホーム(特養)で講義を行っている期間に、その県で初めて新型コロナウイルスの感染者が発生したというニュースが報道されたのです。

その特養と同一県内での発生とあって、介護の現場では混乱が起こるのかと思いました。しかし思いのほか、職員も施設長もまだ遠い存在と考えられているように感じました。

そこで、施設の職員にその時点でどのような対策をしているのか確認したところ、「この時期はインフルエンザの流行が懸念されるので通常のスタンダードプリコーションを実施している」という回答を得ました。スタンダードプリコーションとは、医療や介護の現場で取り入れられている標準感染予防策のことです。

また、私が聞き取りを行ったその他の介護施設においても、同様の対応をしているとの回答がほとんどでした。
つまり特養などの介護施設では、新型コロナウイルスだけにとらわれず日頃から感染予防を意識した対応を行っているのです。

厚労省の通達で変わった介護施設による面会者の対応

介護施設における新型コロナウイルスへの対応については、当初は厚生労働省から特段の指示があったわけではなく各施設の判断に任せるというスタンスでした。
そのため多くの介護施設では面会制限までは行わず、マスク着用の徹底と体調不良時の面会制限というかたちで対応していたのです。しかし、その対応で良いのかという不安を耳にすることも多々ありました。

この後、介護老人保健施設(老健)職員の新型コロナウイルス感染が明るみに出たことから、厚生労働省は介護施設に対して面会制限や職員の検温などに関する通達を出しています。
それを受けて、一切の面会を制限する措置を取る介護施設が増えました。なかにはターミナルケア(終末期ケア)を受けている家族でさえも面会を制限するという、苦渋の判断をする施設も出ています。

その後も連日のように厚労省からの通達が続き、介護の現場はその対応に振り回されている傾向が見られます。

介護施設での新型コロナウイルス対策はどうするべきか

多くの高齢者が生活する介護施設では、日頃から十分に感染予防への対策をしておく必要があります。特にいまはインフルエンザやノロウイルスへの感染が懸念される時期です。

介護施設においての感染予防に関しては、平成30年3月に厚生労働省から「高齢者介護施設における感染対策マニュアル(改訂版)」が発行されています。
このマニュアルには感染対策への基礎知識をはじめ感染症発症時の対応など、管理者以外の介護職員が知っておくべき内容が書かれているのですが、ほとんどの介護職員はこのマニュアルの存在を知らないのが現状です。
また、感染予防としての正しいマスクの着用や手洗いができていないケースはどの施設でも散見されています。

これは決して現場の職員だけが悪いわけではありません。正しい感染予防の教育を行って基本的な知識を浸透させるという、施設管理者による介護職員への周知が十分でないことが問題です。
したがって、介護施設では正しい知識をつけるための専門的な研修を早急に開催し、併せて間違った対応をしていないかなど感染予防対策の実施状況についての把握を行う姿勢が求められます。

これら基本の徹底が行われなければ、面会制限や体調のチェックを実施したところで、いずれ施設内においても感染が蔓延してしまうでしょう。

感染予防は「マスクをすれば安心」ではない

多くの人が新型コロナウイルスの感染予防対策としてマスクの着用を実施しており、マスクで感染を予防できると思っていがちです。しかし、マスクの着用により起こる弊害もあることを忘れてはいけません。

たとえば、マスクを装着しているとマスクのずれなどが気になり、マスクに触る頻度が増えます。しかし、マスクには数多くの細菌やウイルスが付着しているため、マスクを触ったあとにしっかりと手洗いをしないと接触感染の原因となります。無意識のうちに自分の手を介して、細菌やウイルスを広げてしまいかねないのです。

そのようなことを避けるためには、マスクがずれないようにしっかりと装着して、触らないように気をつけます。もしマスクに触った場合には、そのあとに必ず十分な手洗いを行うようにしましょう。
一番の感染予防はマスクの着用よりも手洗いであることを決して忘れてはいけません。

正しい知識と対応をもって新型コロナウイルスを恐れる

介護施設に入所している高齢者が自らどこかで感染してくるとは考えられないため、施設内で感染が起こった場合の多くは、ウイルスなどが外から持ち込まれることが原因です。その媒体となりうるのは、介護施設の職員や面会される家族、外部業者など。
本来安全であるべき高齢者施設に病原菌が持ち込まれるようなことは、絶対に避けなければなりません。高齢者の介護にかかわる人はこの意識をしっかりと持つ必要があります。

新型コロナウイルスはその治療薬やワクチンがまだ開発されていないばかりか、高齢者や持病のある人の致死率が極めて高いと言われています。一人ひとりが正しい感染予防の知識をつけ、確実に実施することで、未知のウイルスへの感染を防げるようにしていきましょう。

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著者:寺岡 純子

著者の画像

著者:寺岡 純子

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合同会社カサージュ代表
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、終活カウンセラー1級
8年間の臨床看護を経て、介護保険の開始に伴い介護業界へ転向。全国展開する大手介護事業者で部長職としてさまざまな介護サービスの運営・人材育成を経験する。医療・介護の幅広い知識と経験を多くの介護事業者に届けたいとの思いから独立。現場・事業者・利用者の視点に立ち、介護に特化した研修や事業者・介護者のサポートを行っている。

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