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新型コロナによる影響は?認知症の高齢者と家族に心配されること

新型コロナによる影響は?認知症の高齢者と家族に心配されること新型コロナによる影響は?認知症の高齢者と家族に心配されること

新型コロナウイルスの影響により、さまざまな社会活動が縮小しています。いつになれば元通りになるのか予測がつかない中、介護サービスの利用ができないなど、多くの高齢者に影響が出ています。その影響は、在宅で過ごす認知症の高齢者にとっても小さくありません。
この記事では、介護事業者の休業や外出自粛によって認知症の高齢者に起こりうることや気を付けるべきこと、その対処法などについて解説します。

自主休業を選択する介護事業所が増加

4月7日、7都府県に緊急事態宣言が出されました。厚生労働省の発表によると、4月13日から4月19日の間に休業した介護サービス事業所は、通所・短期入所系サービスで449か所、訪問系サービスで16か所、合計465か所です。全国では合計909事業所となりました。
このうち、都道府県からの要請による休業は愛知県の2つのみ。ほとんどの事業所が、自主的に休業している状態です。

自主的な休業をする事業所はデイサービスだけでなく、訪問介護も増加傾向にあります。休業により介護サービスを受けられなければ、要介護者やその家族にとって大きな負担となる中で、特に認知症の高齢者への影響が心配されます。

介護事業所休業、外出自粛…認知症高齢者と家族への影響は?

介護サービス事業所の休業や外出自粛により習慣が崩れると、認知症の人や介護者である家族にはさまざまな影響が出る恐れがあります。影響の出る可能性の高い4つの項目にまとめました。

認知症の進行

デイサービスなどへの通所がなくなると、他の人との交流や会話をする機会が減少し、刺激が少なくなります。また、外出せず自宅に閉じこもると、1日を通して単調な生活になりがちです。
そうなると、認知症の人や認知症の前段階にあるMCIの状態にある人では、認知症の進行が懸念されます。

また、認知症の人が一人暮らしの場合も心配です。家族は外出自粛のため、または新型コロナウイルスを感染させないようにとの配慮から、認知症高齢者が暮らす自宅への訪問を控えることもあるでしょう。
顔を合わせる機会が減ると、認知症がある人は家族の顔を忘れてしまったり、家族という認識ができなくなったりすることがあります。そうすると、その後の関係性に問題が生じることも考えられます。

生活環境の変化によって認知症を進行させてしまう高齢者は多いため、それを防ぐ工夫が必要です。慣れ親しんだ高齢者の自宅で、他者との交流や会話の機会が持てると良いでしょう。
しかし現在は、家族の訪問が難しい状況かもしれません。その場合には、頻回に電話をするなどして、認知症の人の状態を把握するように努めましょう。

日常生活が困難になることも

認知症であっても、定期的に誰かの見守りや支援があることで一人暮らしが可能な人もいます。しかし、もしなじみの介護サービスが休業すれば、一人で生活できなくなる可能性もあり、非常に問題です。

また、介護事業所が休止をするときには、利用者が困らないように他のサービス事業所に引き継ぐことが前提ですが、現在の状況だと引き継げる事業所がない可能性があります。もしあったとしても、認知症があると、事業所や職員の変化によって混乱を起こしてしまうことが考えられます。
そうすると、自宅内に入れてもらえない、お迎えに行っても断られるなど、在宅生活の継続が困難になることも起こりうるでしょう。

新型コロナウイルスの流行を受けた特例として、デイサービスへの通所を休止する代わりに、利用者の自宅に職員が訪問して対応をする事業所もあります。利用するデイサービスが休業になりそうなら、在宅に出向いてのサービスができないかも確認してみてください。
事業者には、なじみの関係が途絶えないように可能な範囲での協力を求めていきたいところです。

身体機能の低下

外出を自粛したり、デイサービスなどで運動をしたりする機会が減少するため、筋力などの身体機能が低下する危険性は非常に高いです。

生活リズムを乱さないためにも、人の少ない場所や時間帯を選んで散歩に出かけるなどの日課を作りましょう。また、自宅内でも体操をしたり、家事を手伝ったりするなど、できることはやってもらい、なるべく体を動かせる機会を作ると良いと思います。
ただし、家族は失敗しても決して怒らないように心がけるようにしましょう。

家族の介護負担の増加

デイサービスやショートステイの利用ができなくなると、家族は本来介護サービスを利用していた時間も介護を担うことになります。3食の食事を作り、デイサービスで受けていた入浴も家族が介助することになれば、介護者の休む時間がなくなってしまいます。
また他にも、「外出を控えなければならない理由や、帰宅後の手洗いの必要性を理解できない」「日常の生活リズムが崩れて夜間の不眠やせん妄などが生じる」などが、家族の負担を増加させる理由として考えられます。

症状の出方などにもよりますが、認知症介護は簡単ではありません。もし介護サービスを利用できなければ、家族の身体的・精神的な疲労、ストレスの増大などが心配されます。

家事や介護を無理なく行うためには、他の家族に協力を仰ぐ、家事を完璧にしようとしない、食材やお弁当の宅配、配食サービスを利用するなど、少しでも家族の負担が軽減するようにしましょう。
そうすることで、身体的な疲労の軽減だけでなく気持ちにもゆとりができ、イライラも軽減できます。認知症の方や家族との会話や接する時間をゆっくり確保できるというメリットにもなるでしょう。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の蔓延により、認知症高齢者にとってはこれまでにない環境の変化となります。本人だけでなく家族にとっての不安も大きいと思いますが、いろいろな工夫をすることで乗り超えられると考えています。
いまの状況に悲観的になるのではなく、この難局をこれまでの介護生活を見直す機会と前向きにとらえることで、これからも続く介護を上手く乗り越えるヒントが見つかるかもしれません。
たとえデイサービスなどの事業所が休業を余儀なくされても、介護職員はいつもご利用者のことを気にかけています。それぞれが「いまできること」に取り組み、新型コロナの終息に立ち向かっていきましょう。

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著者:寺岡 純子

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著者:寺岡 純子

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合同会社カサージュ代表
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、終活カウンセラー1級
8年間の臨床看護を経て、介護保険の開始に伴い介護業界へ転向。全国展開する大手介護事業者で部長職としてさまざまな介護サービスの運営・人材育成を経験する。医療・介護の幅広い知識と経験を多くの介護事業者に届けたいとの思いから独立。現場・事業者・利用者の視点に立ち、介護に特化した研修や事業者・介護者のサポートを行っている。

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