認知症サポーターとは?5つの役割と受講するメリット

認知症サポーターとは?5つの役割と受講するメリット認知症サポーターとは?5つの役割と受講するメリット

認知症の方やその家族を支える認知症サポーターに注目が集まっています。認知症サポーターは認知症とともに生きる地域づくりの実現に向けた取り組みのひとつです。
本記事では、認知症サポーターの役割や養成講座の内容について解説します。

認知症サポーターとは

認知症サポーターとは、認知症の正しい知識を持ち、偏見を持たずに認知症の方やその家族を見守り支援する応援者のことです。
認知症という病気に対する正しい理解があり、認知症の方への接し方を知っているため、近所やまちなかで困っている認知症の方がいたら声かけや見守りなどの手助けができます。

認知症サポーターになるには、全国キャラバン・メイト連絡協議会と市区町村、企業・団体などが開催する認知症サポーター養成講座の受講が必要です。
誰でも受講可能で、高校生や地域住民、スーパーマーケットの従業員、金融機関の職員などさまざまな人が認知症サポーターとして活躍しています。

認知症サポーターの人数は2023年9月30日時点で1,482万2,637人。全国にたくさんの認知症サポーターがいます。

認知症サポーターが誕生した背景

日本では高齢化に伴い認知症になる方も増加しています。今後もさらなる増加が見込まれ、厚生労働省の資料によると認知症高齢者の人数は2025年に約700万人にのぼるとされています。つまり、65歳以上の約5人に1人が認知症になるのです。

地域で認知症の方が増え続けると、家族や介護施設だけでは支えきれません。そこで、地域全体でサポートする仕組みづくりの一環として認知症サポーターが考案されました。

認知症サポーターの育成は2005年に開始されました。厚生労働省による「認知症を知り地域をつくる10カ年」の構想のひとつで、認知症になっても安心した生活ができる地域づくりを目指すものです。

さらに2015年には、厚生労働省が「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定します。認知症の方の意思が尊重され、住み慣れた地域で自分らしく生活を続けることができる社会の実現を目指しています。

新オレンジプランでは2017年度末に認知症サポーターを 800 万人まで増やすことが目標でしたが、2023年9月30日時点で1,482万2,637人まで増えました。認知症サポーターの育成は順調に進んでいるといえるでしょう。

認知症に対する社会の理解を深め、地域で認知症の方やその家族を支えるために、現在も認知症サポーターの輪が広がっています。

認知症サポーターができることとその役割

認知症サポーターができること

認知症サポーターは認知症に対する正しい知識を持っています。心がけ次第ではできることが増えるため、以下のような役割が期待されています。

・認知症に対して偏見をもたずに正しく理解する
・認知症の方や家族を温かな目で見守る
・近隣の認知症の方や家族へのサポートを実践する
・地域で協力・連携・相互扶助のネットワークをつくる
・まちづくりを担い地域のリーダーとして活躍する

認知症に対して偏見をもたず正しく理解する

認知症サポーターは認知症への正しい理解と知識を持っています。
認知症について正しい認識をもつことで、認知症の人に対して“何もできない人” “何もわからない人”などという偏見をもたずに接することができます。

認知症になっていちばん苦しんでいるのは認知症の方本人です。そんな苦しむ気持ちに対して特別な援助はできなくても、よき理解者として寄り添えます

また、認知症に対して漠然とした不安を抱くこともないため、自分自身が認知症になったとしても「認知症になったらもうおしまいだ」などと絶望せず、前向きに受け止められるでしょう。

認知症の方や家族を温かな目で見守る

認知症サポーターは認知症に対する正しい知識や理解があるため、認知症の方や家族を温かな目で見守れます。特別な取り組みをせずとも、困った人がいれば話を聞く・付き添う・見守るなど、自分ができる範囲で手助けできるでしょう。

例えばスーパーの店員が認知症サポーターなら、認知症の高齢者がレジで支払いに困っているとき、同じものをたくさんカゴに入れているときなどに温かみのあるフォローができます。

認知症サポーターは特別な取り組みを義務付けられているわけではありません。活動内容は人それぞれですが、困っている認知症の方やその家族にとっては頼りになる存在です。

近隣の認知症の方や家族へのサポートを実践する

認知症サポーターは家族や友人、近所に住む認知症の方に対し、自分のできる範囲でサポートを実践することができます。

例えば、近所に住む認知症の方が散歩していたら、挨拶をしてさり気なく様子をみたり、帰宅を見守ったり、一緒に帰宅したりするなどのサポートができます。
また、認知症の方を介護している方がいれば、話を聞いたりねぎらいの言葉をかけたりするなど、不安や辛さに寄り添うこともできるでしょう。

近所付き合いの延長線程度のことで構いません。ちょっとした気遣いや見守りなどのサポートが、近隣の認知症の方や家族にとっては大きな支えになります。

地域で協力・連携・相互扶助のネットワークをつくる

地域に困ったときに頼れる人や場所があれば、認知症になっても安⼼して暮らし続けられます。認知症の方やその家族、支援する人のためのネットワークをつくることがその手助けになるでしょう。

「ネットワークをつくる」といっても特別なことをする必要はありません。個々の手助けはささやかでも、それが何十人、何百人と集まれば大きな力になります。

必要なサービスへとつなげる知識があるとネットワークの輪も広がります。他の人の力が必要なときには、認知症カフェや介護家族会、地域包括支援センター、市町村役場の介護保険課など、認知症の方の支援をする場所や専門機関につなげます。

まちづくりを担い地域のリーダーとして活躍する

認知症サポーターは、認知症の方が暮らしやすい地域づくりを担う一員です。活動を続けていけば自然と同じ志を持った仲間ができてボランティア活動などにつながることもあり、一人ひとりの小さな力が合わさって認知症の方に優しいまちがつくられます。

自分で認知症カフェを立ち上げるなども活動のひとつです。そこまでの活動でなくても、「認知症の人を支援します」という意思を示す目印であるオレンジリングをつけて地域の会合に参加するだけでも、認知症サポーターを知ってもらうきっかけになるかもしれません。

認知症の人を家族だけで支えていくには限界があります。できる限り住み慣れた地域・環境のなかで自分らしく暮らし続けることができるように、認知症の方にやさしいまちづくりが求められています。

認知症サポーターになるメリット

認知症サポーターになると、以下のようなメリットがあります。

・認知症の方へ適切な対応ができる
・認知症の方が住みやすい地域を作れる
・同じ思いを持った人同士のつながりができる

認知症の方へ適切な対応ができる

認知症サポーター養成講座では、認知症の基礎知識や接するときの心がまえなどを学べます。

正しい知識を身につけることで、家族が認知症になったときにも適切な対応ができます。
認知症のような症状が出たときに不安にならずにすみますし、早期発見・早期治療にもつながります。早い段階に適切な治療やケアを受けることで、進行を緩やかにできるといわれています。

また、正しい接し方ができるので、声のかけ方などに悩まずにすみます。家族はもちろん、まちで認知症の方が困っているときには、不安を和らげるようなさり気ないサポートができるでしょう。

金融機関やコンビニエンスストアなどで接客業をしている人であれば、認知症のお客さまと接する機会も少なくありません。正しい声かけや対応ができるなど役立つ機会も多いでしょう。

認知症の方が住みやすい地域を作れる

認知症に理解のある人が増えると地域に見守りの目が増えます。認知症サポーターになることでその一助になれます。
その取り組みが広がることで、家族や自分自身が認知症になっても住みやすい地域になるでしょう。

同じ思いを持った人同士のつながりができる

認知症サポーターになることは、市区町村のボランティア活動への参加、認知症カフェの開催などさまざまな活動を始めるきっかけになります。

活動をするなかで、他の認知症サポーターや同じ思いを持った人とつながりもできます。実際に認知症の方やその家族を支える活動に参加することで、大きなやりがいも感じられるでしょう。

認知症サポーターになる方法

認知症サポーター養成講座の内容

認知症サポーターになるには、認知症サポーター養成講座を受講する必要があります。
家族や知人に認知症患者がいる方、接客などの業務で認知症の方への接し方を知りたい方、福祉系の仕事を目指す学生など以外にも、興味があれば誰でも受講可能です。年齢などの要件はなく、特別な資格も必要ありません。

受講料は無料で、受講後は認知症サポーターの証としてオレンジリング認知症サポーターカードがもらえます。

講座を実施するのは都道府県や市町村などの自治体、全国規模の企業・団体です。自治体により開催の頻度は異なるため、受講を希望する方は居住地や勤務地の市区町村のホームページなどを確認しましょう。

認知症サポーター養成講座の内容

認知症サポーター養成講座の時間は約1時間30分で、基本カリキュラムは以下の通りです。

内容 時間
認知症サポーターキャラバンとは 15分
認知症を理解する(1)
1認知症とはどういうものか
2認知症の症状
3中核症状
4行動・心理症状(BPSD)とその支援
30分
認知症を理解する(2)
5認知症の診断・治療
6認知症の予防についての考え方
7認知症の人と接するときの心がまえ
8認知症介護をしている人の気持ちを理解する
30分
認知症サポーターとは
認知症サポーターのできること
15分

養成講座の内容は、認知症の症状や治療、認知症の人との接し方など、認知症を理解し、サポーターとして活動するために必要な知識を身につけるものとなっています。

認知症を引き起こす主な病気や認知症の症状・行動などをはじめ、認知症の方は実際にどのように物事を感じているのか、なぜさまざまな症状や行動が出現するのかなど、認知症の基礎知識が身につきます。

また、認知症の予防・早期診断・早期治療の必要性、認知症の方や家族と接するときの心がまえなども学べる講座です。

なお、講座内容の詳細は実施主体者によって多少異なることもあります。
例えば、東京都千代田区の認知症サポーター養成講座では、配布された資料の説明やDVDの視聴、グループワークなどが実施されました。
グループワークでは、認知症かもしれない高齢者を見かけたときにどのように対応するべきか、具体例を元に少人数で話し合われました。

参加者の置かれた状況によって意見も異なるため、他の人の考え方を知ることができる貴重な機会にもなります。

認知症サポーターは認知症の方や家族の支えになる存在

認知症になる人は今後も増えていく見込みですが、認知症は決して他人事ではありません。誰もがなる可能性のある身近な病気です。
そのため、認知症の方とその家族が安心して暮らせる、やさしい地域づくりの実現への取り組みが進められています。

認知症サポーターは認知症について偏見をもたず正しく理解し、認知症の方や家族を温かい目で見守る応援者です。認知症の方をさり気なく見守ったり手助けをしたりと、自分のできる範囲でサポーターとして活動します。

認知症サポーターになるには、自治体または企業・職域団体が実施する認知症サポーター養成講座の受講が必要です。特別な資格は必要なく、養成講座を受講すれば誰でも認知症サポーターになることができます。
認知症サポーター養成講座の受講を希望する方は、居住地や勤務地の市区町村のホームページなどを確認してみてください。

認知症サポーターが増えることで認知症への正しい理解が広がり、地域で暮らす認知症の方やその家族にとって大きな支えとなるでしょう。

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著者:ハートページナビ編集部

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