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認知症の一人暮らしの限界はいつですか?離れて暮らす父が心配です

認知症の一人暮らしの限界はいつですか?離れて暮らす父が心配です認知症の一人暮らしの限界はいつですか?離れて暮らす父が心配です
はーとん

一人暮らしをする親御さんが認知症になったら……。家族は心配だっポ。
本人が「自宅を離れたくない」って言っているうちに認知症が進行しちゃう可能性もあるよね。

父

認知症で一人暮らしを続けられる限界ってあるのかな?
そうなる前にちゃんと対処しないとね。

相談:認知症の父はいつまで一人暮らしできますか?

<まさとさん(仮名)58歳>
83歳になる父は認知症の診断を受けていますが、今は一人暮らしをしています。私は遠方に住んでいるため頻繁には通えず、顔を出せるのは月1回程度です。

認知症があるので心配はしていましたが、最近では薬がたくさん余っていたり、冷蔵庫に同じものがいくつも入っていたりすることが増えてきました。このままでは心配なので私たち家族との同居や施設入所を勧めましたが、父は「自宅を離れたくない」の一点張りです。

認知症の人はいつまで一人暮らしが可能ですか? 放置するわけにもいかず、限界がきてしまうのではと心配です。

はーとん

認知症の人が一人で暮らすのは、お金の管理や食事、衛生面、トラブルが起きないかとか、何かと心配だっポ。困りごとの対策をチェックしてね。

認知症の人が一人暮らしできる限界は?

一人暮らしをする高齢者は増加傾向にあり、独居の高齢者数は2021年時点でおよそ743万人です(令和5年版高齢社会白書より)。
また、認知症を患う高齢者の数も増加の一途をたどっており、2012年は462万人でしたが、2025年には700万人になるといわれています。高齢者の5人に1人が認知症という時代はすぐそこまで来ているのです。

認知症の一人暮らしの場合、本人が気づかないまま症状が進行してしまうことは少なくありません。周囲が異変に気づいたときには、すでに一人暮らしがままならない状況になっていることも。

では、認知症の人が一人暮らしを続けられる限界点はどこなのでしょうか。
認知症の症状は、生活環境や本人の性格、病状などによって違います。また、経済的事情や家族との関係性などを理由にやむを得ず一人暮らしを継続している高齢者もいます。
そのため、一人暮らしの限界を同じような物差しで判断することは難しいのです。

しかし、本人に生命の危機がある、または周りとのトラブルが頻繁な場合には、一人暮らしは限界に達しているといえます。早急に家族やケアマネジャーなどと今後のことを検討しましょう。

認知症の一人暮らしで困ることと解決策

認知症の人の一人暮らしでは、さまざまな問題が起こります。もし問題が起きたら、まずは今の状況で解決できる方法がないか考えましょう。
よく起こる問題と解決策には以下のようなものがあります。

お金の管理

認知症の一人暮らしで一番困るのはお金の管理です。特に、光熱費等の支払いを忘れてガスや電気が止まると生活に大きな影響を与えます。光熱費等は口座引き落としにしておきましょう。

不必要な契約もよく起こる問題のひとつです。具体的には、正当な判断ができないまま契約を行っている可能性がある次のようなケースとなります。

  • 新聞を何社も契約している
  • 新しい布団など自分では買いに行けない商品がいつの間にか増えている
  • 健康食品やサプリメントがいくつもある

不要な契約を見つけたときには、訪問販売や電話勧誘販売であればクーリングオフ制度を活用できます。悪質な訪問販売等で購入していると思われる場合には、消費生活センターに相談するのも良い方法です。

通信販売は、解約しても購入依頼の電話がかかってくることがあります。会話を自動録音できる電話や、登録した番号以外の着信音が鳴らない電話にしておくとよいでしょう。

また、将来に備えた任意後見制度成年後見制度の活用を検討しておくと安心です。

薬の管理

薬の飲み忘れや重複は、認知症の一人暮らしでよくみられる困りごとのひとつです。
糖尿病や血圧の薬は体調に大きく影響します。飲む時間ごとに容器に分けるお薬カレンダーを活用するなどで、飲んだかどうかを一目で確認できます。

医師に相談して複数の薬をひとつの袋にまとめる一包化も大変有効です。
また、薬剤師による訪問指導や訪問看護などの介護保険サービスを利用して、きちんと管理できているかを定期的に確認できる環境を整えておきましょう。

食事の管理

認知症の一人暮らしでは、以下のような食事の問題が起こりがちです。

  • 料理ができなくなる
  • 1日何食も食べている
  • 食事をあまり食べていない
  • パンやお菓子など簡単なものばかり食べている

食事の問題があれば、お弁当を配達してもらう配食サービス介護保険サービスの利用を検討しましょう。
デイサービスなどの通所系サービスでは確実に昼食を食べることができますし、事業所によっては朝食や夕食の提供もあります。また、訪問介護でヘルパーと一緒に調理を行うのもよいでしょう。

徘徊(外出・迷子)

認知症が進行すると、外出したまま自宅に戻れず徘徊してしまう人がいます。徘徊は前触れなく突然起こると言われており、季節によっては凍死や熱中症のリスクもある心配な行動です。

徘徊の心配がある場合には、認知症徘徊感知機器GPSが内蔵された靴などを活用するとよいでしょう。地域の人と連携して声掛けや見守りをしてもらうのも、対策のひとつです。

衛生・健康面の悪化

認知症になると、着替えをしない、入浴を嫌がる、排泄の失敗を隠すなどがよくあります。
一人暮らしだと不衛生なまま生活を送ることになるため、デイサービスや訪問介護などを利用して、定期的に着替えや入浴を行える環境を整えましょう。

また持病がある人だと、薬の管理や食事のコントロールがうまくできずに体調が悪化しやすくなります。通所サービスや訪問介護に加えて、訪問看護などを利用すると健康状態の定期的な確認ができます。

火事や事故

認知症の一人暮らしでは、火事や事故のリスクも高くなります。自分で料理しようとしてボヤを起こしてしまう例は少なくありません。
また、社会問題となっている高齢者の交通事故は、認知症が影響していることも多々あります。

火事や事故を起こさないためには、次のような対策をとるとよいでしょう。

  • コンロはガスからIHに変更する
  • 介護保険サービスを利用して一人の時間を減らす
  • 買い物は宅配サービスや訪問介護を利用する

また、車の運転は認知症が進行すると大変危ないため、可能であれば免許を返納するのが安心です。
しかし本人が返納に応じないケースも多く、車を処分したり、カギを隠す・預かるなどして運転できない工夫をする家族もいます。

ご近所トラブル

認知症が原因のご近所トラブルとしてよく聞かれるのが「ゴミ問題」です。
認知症の症状が進むとゴミの分別ができなくなります。ゴミ出しの曜日や時間を頻繁に間違えることが多くなり、その結果ゴミをため込んでしまう高齢者も。

ゴミ問題が起きたときには、訪問介護を利用して捨ててもらう方法があります。個別ゴミの回収に対応している自治体もあるので、お住まいの自治体やケアマネジャーに相談しましょう。

高齢者の一人暮らしが限界になったらどこに住む?

高齢者の一人暮らしが限界になったら住む場所

認知症の親と家族が離れて暮らしていると、気がつかないうちに親の一人暮らしが困難な状況に陥っていたという例も少なくありません。
急な状況に慌てないように、一人暮らしの限界がくる前に早めの準備をしておきたいものです。

そのためには、まず早い段階から本人の意向と家族の気持ちをしっかりと伝え合い、親が暮らす場所について決めておきましょう。生活拠点の選択肢はさまざまあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

また、以下の場合は一人暮らしが限界の状態だと考え、同居や施設入居を検討しましょう。

  • 徘徊の頻度が急激に増えて警察にたびたび保護されている
  • 体調の悪化で介護サービスが適切に利用できない
  • 近所でトラブルが頻発する
  • それまで利用していた介護サービスの拒否が増えている
  • 会話が成り立たなくなってきた

家族と同居

家族との同居でもっとも大きなメリットは、本人の様子に目が行き届くようになることです。
家族は小さな変化に気づけるので、認知症が進行しても早期に対応できるでしょう。本人にとっては、毎日暮らしを共にすることで不安感や寂しさが和らぎます。

ただし、それまでの一人暮らしとは違う生活になるため、混乱からくる症状の悪化も考えられます。同居する場合には、なじみやすい環境づくりを行うようにしてください。

親の自宅近くの施設に入居

同居が難しい場合には、老人ホームへの入所の検討をする人が少なくありません。
本人の自宅近くの施設に入居すれば、なじみのある地域で暮らし続けられるメリットがあります。また、施設であれば専門スタッフから介護を受けられ安心です。

しかし、老人ホームでは集団生活となるため、それまで一人で暮らしてきた高齢者にとっては大きな環境変化となります。なじめるまでの時間は人それぞれですので、まったく順応できないまま症状が一気に進行してしまうデメリットも考えられるでしょう。
家族が遠方に住む場合には、なかなか面会に行けないというデメリットも考えられます。

家族の自宅近くの施設に入居

家族が暮らす自宅近くへの施設入居であれば、家族はいつでも面会に行くことができ安心です。本人にとっても子どもや孫に会いやすくなるメリットがあります。

しかし、住み馴れた地域を離れることは、本人に思った以上のストレスがかかると頭に入れておく必要があります。特に都道府県を超えた移動だと、文化や言葉の違いから疎外感を感じてしまう人もいるのです。

家族の面会回数を増やしたり、自室になじみの物を置いたりして、少しでも本人のストレスを和らげることが大切です。

介護サービスを利用した一人暮らしの継続

一人暮らしの継続は、長年なじんだ家や地域での生活が継続できるため、本人にとってはもっともストレスが少ないといえます。実際に、介護サービスや配食サービスなどを活用して一人暮らしを継続する高齢者は少なくありません。

しかし、どれだけサービスを活用し地域の支援を受けたとしても、切れ間のない見守りは不可能です。体調の急変や徘徊などの突発的な事態にすぐに対応できないケースもあります。

まとめ

認知症の人は環境が変化すると混乱しやすく、症状が急激に悪化する可能性があります。
しかし一人暮らしで問題が起こっていても、ちょっとした工夫や介護保険サービスの活用で一人暮らしを続けられるケースが多くあるのも事実です。

早いうちに家族で話し合い、限界がきても焦らないよう準備しておきましょう。

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著者:中村 楓

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著者:中村 楓

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介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級、認知症介護実践者研修修了
現役介護福祉士の介護コラムニスト。介護療養型医療施設(現:介護医療院)を含む病院やデイケア、デイサービスなど、入所から在宅までさまざまな現場を経験。介護職員や介護認定調査員の経験を経て、現在は相談員として勤務。介護の未来を明るくしたいという想いから、現場感あふれる記事を誰にでもわかる表現で執筆中。

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