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高齢者の低栄養はなぜ危険?低栄養の原因やおすすめ食材を紹介

高齢者の低栄養はなぜ危険?低栄養の原因やおすすめ食材を紹介高齢者の低栄養はなぜ危険?低栄養の原因やおすすめ食材を紹介
はーとん

高齢者の低栄養について解説するっポ。

高齢者の低栄養とは?

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そもそも低栄養ってどんな状態なのかな?

低栄養と聞いて、あなたならどのようなイメージが思い浮かぶでしょうか?
“低”と付いているからには何か栄養が足りない、例えば募金をつのるCMに登場するひどく瘦せた子供たちのような……? パッと思い付くのはこのようなイメージかもしれません。
今まさに危機的状況でなければ、低栄養などどこか遠くの出来事かと思ってしまいそうです。

ところが、実際の低栄養は私たちのすぐ隣で、いつでもじわりじわりと忍び寄る機会をうかがっています。特に高齢者の場合は、周囲が気づかぬまま深刻化することがあるので注意が必要です。

低栄養の状態とは、エネルギーとタンパク質が不足していることを指します。

高齢者の低栄養は一見した限りでは変化が分かりにくく、当人も「年を取ってちょっと疲れやすいだけ、少し休めば大丈夫」と思ってしまいます。そのため、発見が遅れてしまう点が厄介といえるでしょう。

放っておくと危険な病気の原因にもなりかねない低栄養、見逃さないようにしたいものです。

高齢者は低栄養になりやすい?低栄養の人の割合

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高齢者10人のうち1~2人は低栄養の状態だっポ。

厚生労働省が行った国民の健康と栄養に関する調査によると、低栄養傾向*にある65歳以上の割合は、男性12.4%、女性20.7%になるそうです。

*「健康日本21(第二次)」では、高齢者の低栄養傾向の基準としてBMI20 以下を指標として設定している。BMIは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出。体重55kgで身長160cmなら、55(kg)÷1.6(m)÷1.6(m)でBMIは21.48となる。

さらに、85歳以上では男性17.2%、女性27.9%……低栄養の人が、男性のおよそ6人に1人、女性の3.5人に1人以上の割合だなんて驚きです。

高齢者が低栄養になってしまうきっかけには、加齢に加え、仕事や子育てを終えてライフスタイルが変化した、疾患によって以前より行動範囲が狭まった、体を動かす機会が減ったなどがあります。

体を動かさなければ、気持ちの良い睡眠もとれません。睡眠不足により体内時計が狂うと食欲が落ちてしまう可能性もあり、そうなると必要な栄養を補給しにくくなります。
日々の不足が積み重なって悪循環に陥りやすい高齢者は、低栄養のリスクがとても高いのです。

高齢者が低栄養になる原因とは

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厚労省の資料を参考に解説するっポ。

高齢者の低栄養は、複数の原因が複雑に絡み合って出現します。はじめは些細なことかもしれませんが、気付いた頃には雪だるま式に大きくなってしまうのです。
厚生労働省の資料を参考に、ここでは5つの要因を紹介します。

  1. 社会的要因
  2. 精神的要因
  3. 加齢による身体の変化
  4. 疾患の影響
  5. その他の要因

01.社会的要因

それまでは誰かのために人生を歩んできたのに、何らかの形で大切な家族、パートナー、友人、ペットなどを失ってしまった喪失感・孤独感から活動を制限してしまい、食欲が落ちてしまうことがあります。
また、一人暮らしで頼れる人が身近にいないと、食事の準備が煩わしくなることもあるでしょう。かつては家族や友人と囲んでいた食卓は、何とも言えない寂寥感を誘います。
貧困状態にある高齢者の場合は、節約目的で1食抜きを始めたら次第に食べないことに慣れてしまい、食事をしなくなってしまうケースもあります。

02.精神的要因

認知機能障害があると、食事に気を配ることが難しくなります。一人で心を苛まれてうつになれば、食事への意欲を失ってしまうこともあるでしょう。
また、誤嚥や窒息への不安から、食事をすることに強い恐怖を持つ人もいるようです。

03.加齢による身体の変化

高齢になると、主に味覚、嗅覚の衰えにより、五感から伝わる食べ物の美味しさに気付かなくなっていきます。美味しそうと思わなければ、食べる気が起きないのは当然です。そして、食欲がなくなっていきます。

04.疾患の影響

食事に関わる行動が持病による痛みで制限されれば、大抵はそれを避けようとするものです。
立てないので台所を使わなくなった、入れ歯が合わなくて食べ物を嚙み切れない、食べると胃が痛くなる、便秘・下痢でお腹が痛いなど。
日頃服用している薬によって味覚が衰えて、食欲が減退していることもあります。

05.その他の要因

高齢になると、唾液の分泌量が減ったり、むせやすくなったり、入れ歯にすることで食べ物を噛みにくくなったりすることがあります。摂食・嚥下機能が低下していれば、ソフト食やゼリー食など、その人に合った食事形態の選択が必要です。もし適していなければ、食べる意欲があろうとも食べることができません。
また、「健康には粗食がいちばん」などと誤った情報を信じているケースもあります。

高齢者の低栄養はなぜ危険?

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高齢者が低栄養になると、いろんなリスクが高まるっポ。

フレイルやサルコペニアを招く

高齢者の低栄養は、フレイル(虚弱)を招きます。フレイルとは、加齢に伴って体重が減少したり体の働きが弱くなったりする状態で、要介護状態になる危険がある段階です。
フレイルになると、筋肉量の減少で身体機能が低下した状態であるサルコペニアへとつながります。

そして、サルコペニアからまた新たな低栄養の原因が発生し、より深刻な低栄養へと、泥沼の深みにはまってしまうのです。一度はまると抜け出すのは困難で、寝たきり、最悪は死に至ることがあります。
半年以内で体重の減少が2~3㎏以上、または、BMI18.5未満のいずれかに当てはまると、3年以内に要介護になるリスクが1.7倍にもなるといいます。

筋肉量が減少する

筋肉の維持にはタンパク質が必要です。タンパク質は体の中で常に合成と分解を繰り返しています。
食事から充分なタンパク質が得られないと、合成に必要な分が賄えずに分解だけが進んでいくので、筋肉がどんどん失われてしまいます。
筋肉量が減ると、つまずきやすくなる、歩行が困難になる、起き上がるのが辛くなるといった影響が出る可能があるでしょう。

骨折しやすくなる

加齢とともに骨量が減り、骨は折れやすくなっています。通常は、折れないように筋肉が支えていますが、低栄養状態で筋肉量が減ると、ちょっとした衝撃でもダイレクトに骨に伝わってしまい、簡単に骨折してしまいます。

免疫機能が低下する

血液の中のタンパク質・アルブミンが減少すると、体の隅々まで栄養を送ることができません。免疫機能が低下し、病気になりやすく、治りにくくなります。
脳に運ばれる栄養が不足して認知機能障害にもなりやすいので、より深刻な低栄養につながります。

血液検査をして、血清アルブミン値が3.5~3.9g/dLは低栄養予備軍、3.5g/dL未満は低栄養です。

高齢者の低栄養を予防するおすすめ食材

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ちょっとした工夫で簡単にいろんな栄養素が摂れそうだっポ。

若い世代に比べてたくさんの量を食べられなくなっている高齢者は、いろいろな食品を食べるよう心掛けるとよいでしょう。特定の栄養素だけが不足するような事態を予防できます。

今時の冷凍野菜は、定番のブロッコリーやミックスベジタブルのみならず、大根やゴーヤのような変わり種まで揃っています。
冷凍野菜ならすでに下処理が済んでいるので、食事の準備に時間をかけられない時でも、レンジの加熱などで食べられてとても便利です。

筋肉を作るタンパク質を摂ることも重要です。
必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシンは、他のアミノ酸と比較して筋肉の分解を抑制し、筋肉のエネルギー源になります。牛乳・乳製品、鶏卵、赤身の魚、鶏むね肉、大豆製品などに多く含まれています。

牛乳にあまり慣れていない方は、お米を炊くときにスキムミルクを1合当たり大さじ1杯の割合で加えてみてください。ミルクの甘味でまろやかな炊き上がりになります。

食が細く、3回の食事で栄養を摂るのが難しいために低栄養になってしまうなら、ちょっとしたお茶の時間を活用します。ゆで卵やチーズをちょこちょこ食べるなどして、1日トータルで栄養を摂るように意識するとよいでしょう。

それでもどうしても食べられないときは、タンパク質源になる食品から食べるように心掛けましょう。

まとめ

低栄養を予防するには、エネルギー源になる穀類と、良質なタンパク質を含む肉や魚、大豆や乳製品などを意識して、しっかりと食事を摂りましょう。
身体機能の低下した高齢者は、さまざまな要因によって低栄養になりやすい状況です。低栄養からフレイル、さらには介護を要する身体障害に陥ります。

しかし、低栄養は適切な指導を受けながら見守っていけば、予防・回復が見込めます。何もしないよりは何かひとつでもいいのです。まずはやってみるという気持ちが高齢者自身と介護者に芽生えてくれば、新しい未来の選択肢が増えるのではないかと思います。

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