*2022年4月、特定福祉用具販売の対象種目に「排泄予測支援機器」が新たに加わりました。
特定福祉用具販売は、介護用品の購入に関する介護保険サービスです。要介護者の自立をサポートするサービスとなります。
ここでは、特定福祉用具販売の対象となる品目の種類(介護保険で購入できるもの)や利用の流れなどを詳しく解説します。
特定福祉用具販売は、介護保険を利用して介護用品を購入できるサービスだっポ。
特定福祉用具販売とは、福祉用具の購入に関して利用できるサービスです。
たとえば、手足が不自由でも、福祉用具の助けがあれば自立に近い生活ができる――そんなときに、介護保険給付の対象となります。
サービスの対象者は、自宅で生活をしている要介護1~5の認定を受けた人。
要支援1・2の場合には、特定介護予防福祉用具販売の利用が可能です。
特定福祉用具販売とよく似た介護保険サービスに福祉用具貸与がありますが、この2つの大きな違いは、購入なのかレンタルなのか。
また、この2つのサービスでは、対象となる品目が異なります。
特定福祉用具販売の対象になるのは、ほかの人が使用したあとで再利用することに心理的抵抗があるものや、使用することによって元の形態や品質が変わってしまうもの。
具体的には、排泄や入浴などに使用する種目となります。いっぽう、福祉用具貸与でレンタル可能な品目は、車椅子や手すりなどです。
福祉用具の購入のみを利用する場合には、自治体によってはケアマネジャー(介護支援専門員)をつけなくても利用できます。
実際にケアマネなしで利用できるかどうかは、各自治体に確認してください。
介護保険で介護用品を使うなら、購入とレンタルの2つのパターンがあって、それぞれで対象の品目が違うってことね。
福祉用具はいろいろあるけど、介護保険で購入できるものにはどんな種類があるのかな?
特定福祉用具販売の対象になるのは以下の6種目です。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
腰掛便座とは、トイレや寝室で使用する便座のことをいいます。
住宅改修が難しい場合や、トイレまでの移動が困難なときに使用します。介護保険の対象となる腰掛便座は、次の4種類です。
このうちポータブルトイレには、身体の状況や本人の意向にあわせた選択ができるように、さまざまな種類があります。
具体的には、椅子のように4つ足で手すりと背もたれがついたタイプや、便座のふたの上に座面をかぶせて通常は椅子としても使えるタイプ、プラスチック製のスツールタイプなどです。部屋になじむ木製のものもあります。
自動排泄処理装置は、レシーバーと呼ばれる尿を受ける部分やチューブ、タンクが交換可能なため、特定福祉用具販売の対象となります。
なお、自動排泄処理装置本体は、福祉用具貸与(レンタル)の対象です。
排泄予測支援機器は、2022年4月より新たに対象となった種目です。
膀胱内に一定量の尿が溜まると自動で通知される仕組みで、トイレのタイミングを逃しません。失禁回数の減少などが期待できます。
なお、専用ジェルなどの消費品や関連製品は特定福祉用具販売の対象外です。
簡易浴槽とは、居室などでの入浴を可能にする移動が可能な浴槽のことをいいます。取水や排水のための工事を行わないものが対象です。
空気式や折り畳み式などがあり、材質もソフトなものから硬質のものまでさまざまです。
使い勝手だけでなく、保管場所などもよく考えて購入することが大切でしょう。
入浴補助用具は、入浴の際に座った姿勢を保持したり、浴槽の出入りのときに必要となる福祉用具が対象です。
特定福祉用具販売では、次の7種類が該当します。
移動用リフトを使用している場合は、吊り具部分が特定福祉用具販売の対象です。対象となる吊り具は、身体に適合し移動用リフトに連結できるものに限られています。
JASPA介護リフト普及協会によると、吊り具は次の5種類です。
ベルト型吊り具
複数のベルトから構成されている吊り具です。安定した座位姿勢ができる人が対象となります。装着が簡単というメリットがあります。
脚分離型・ローバック交差式吊り具
背中までカバーできるタイプの吊り具です。座位保持がある程度でき、頭を支える能力がある人に向いています。
脚分離型4点式・ハイバック交差式吊り具
頭までカバーできるタイプの吊り具です。自力では頭を支えきれない人でも使用することが可能です。
トイレ用吊り具
お尻の部分が大きく開いている吊り具です。トイレや入浴の際に使用されることが多いでしょう。十分な座位能力がある場合には、車いすの移乗にも使用されます。
シート型吊り具
背中から足にかけてすっぽりと包むタイプの吊り具です。下半身を包み込んでしまうため、車いす上で着脱することはできません。
同じようなものでも、すごくたくさんの種類があるのね。
介護保険を利用して福祉用具を購入するには、条件があるから注意してね。
特定福祉用具販売は、都道府県等の指定を受けた特定福祉用具販売事業者から購入したもののみが対象です。
同じものであってもホームセンターなどで購入した福祉用具は対象にならないので注意しましょう。
購入の限度額は1年間に10万円です。この1年間は4月から翌3月末までとなります。
1年間の福祉用具購入額が10万円を超えると、超えた分は全額自己負担です。この10万円は介護保険における自己負担額ではなく、実際にかかった購入費となるので注意が必要です。
また、特定福祉用具販売は原則償還払いとなっています。償還払いとは、全額自己負担で購入したあとに申請をして、所得に応じた7~9割の保険給付分を現金で払い戻してもらうというものです。
1年間に10万円ね。注意しなくっちゃ。
特定福祉用具販売はケアマネジャーが介入しなくても利用できる自治体もあるけど、ここではケアマネが介入する利用の流れを紹介するっポ。
(1)担当のケアマネジャーに相談する
介護保険を使って介護用品を購入したいときには、まず担当のケアマネジャーに相談するとよいでしょう。
要介護認定を受けていない人は、まず介護認定を受ける必要があります。その場合には、市町村の窓口や地域包括支援センターなどに相談してください。
(2)ケアプランを作成してもらう
相談を受けたケアマネジャーは、利用者の心身の状況や要望などを把握したうえで、どのような介護用品をどれくらい利用したらいいのか、どこのサービス提供事業者を利用するかについて、利用者やその家族などを交えて話し合います。
すべてが決まったら、ケアマネは特定福祉用具販売を位置付けたケアプランを作成します。
(3)サービス提供事業者と契約する
利用者は、ケアプランに基づいて福祉用具販売事業者と直接契約書を交わします。契約をした事業所は特定福祉用具販売計画を作成し、利用者とその家族に説明して同意を得ます。
この計画書には、次の内容を記載することになっています。
(4)利用開始・購入費の支給
特定福祉用具販売計画書が利用者に交付されたら、サービスの利用が可能です。
福祉用具の購入では、まず選定した福祉用具を全額自己負担で購入します。その後、以下の書類をそろえたうえでお住まいの市区町村に申請し、支払額の7~9割(所得に応じる)を受け取ることになります。
など
なお、必要となる書類は自治体によって異なります。詳しくはお住いの市区町村に確認してください。
書類のやりとりも必要になるのね!
特定福祉用具販売はメリットだけじゃなくてデメリットもあるから注意してね。
新品で使用できる
特定福祉用具販売の対象種目の多くは、直に肌に触れるトイレやお風呂で使うようなものです。
そのため、他の人が使ったものでは抵抗を感じる人が多く、新品で使用できることが大きなメリットといえます。
介護保険利用で費用を抑えられる
特定福祉用具販売に該当する商品の多くは自費で購入すると高額ですが、介護保険を利用すれば、1年間に10万円までは所得に応じて7~9割の料金を返還してもらうことができます。
新品で使えるのはいいわよね!
対象品目が限られる
特定福祉用具販売の対象となるのは、入浴や排泄に関わるものやリフトの吊り具部分などの5品目に限られています。
また、特定福祉用具販売の対象となる事業者で購入する必要があります。同じ商品であっても、近くのホームセンターなどで購入した場合は対象となりませんので、注意してください。
限度額を超えた分は自己負担
特定福祉用具販売は1年間の限度額が決められています。この1年間は最初の購入から1年ではなく、4月から翌3月までです。
また、この1年の限度額を超えた分については全額自己負担となるため、購入時期や費用に注意する必要があります。
初期費用は準備の必要がある
特定福祉用具販売は、あとからお金が返ってくる償還払いとなります。そのため、購入時には全額支払う必要があり、お金を用意しておかなければなりません。
償還には手続きが必要となりますので、担当ケアマネに相談しながら行うとよいでしょう。
いらなくなったときの処分に困る
特定福祉用具販売で購入した商品が必要なくなったとき、一番困るのが処分方法です。直接肌に触れるものや摩耗する商品であるため、人に譲るのも難しいでしょう。
大きなものになると処分費用が掛かることもあります。
お金に関わることが複雑そうね。慎重に検討する必要がありそうだわ……。
特定福祉用具販売を利用するときには、以下の点に注意するっポ。
特定福祉用具販売は在宅介護サービスのひとつ。そのため、入院中に使う福祉用具には使用できません。
しかし、退院準備のための購入で退院後に申請書を提出する場合には、入院中でも福祉用具の購入が可能です。
ただし、入院先で行われる面談などで、在宅で適切に使用できる福祉用具を選定したという記録を残さなければなりません。
特定福祉用具販売では、単に古くなったり汚れたという理由では、同一品目の福祉用具を新しく購入することはできません。
すでに購入している福祉用具が破損してしまったときに限り、同一品目を再購入することができます。
また、利用する人の要介護度が著しく高くなった場合にも、再購入が可能です。そのほか特段の理由があれば、認められることがあります。
再購入には、お住いの市区町村窓口にて申請が必要です。詳細は窓口もしくは担当のケアマネジャーに相談してください。
特定福祉用具販売の対象商品はオーダーメイドも可能です。
ただし条件として、利用者の心身状況や自宅の状態によって既製品では対応が難しいといった判断が必要になります。
オーダーメイドの福祉用具を購入するときには、必要となる書類が変わります。希望する場合は、必ずケアマネジャーやお住いの市区町村の窓口にて相談するようにしてください。
車いすや特殊寝台(ベッド)、歩行器などといった福祉用具貸与の対象商品は、特定福祉用具販売に含まれていません。
福祉用具レンタル対象商品を購入すると全額自己負担となるので注意しましょう。
注意点を考慮すれば、サービスの利用で失敗することが少なそうね。
介護用品は購入とレンタルの特性や品目を知って、体の状態や自宅の環境にあわせて利用するといいっポ。
よくわからないときには、ケアマネジャーや福祉用具の専門家に相談してみてね。
*自治体や事業所により、ここで説明した内容と異なる場合があります。詳細に関しては、必ず各自治体・事業所にお問い合わせください。
こちらもおすすめ
新着記事
介護を学ぶ はーとん教室
訪問介護とは?メリット・デメリットや利用料金を簡単に解説
記事を読む >
デイサービスは4種類?サービス内容や利用条件、費用の違いとは
記事を読む >
ショートステイとは?宿泊できる期間やサービス種類の違い
記事を読む >
ケアマネジメント(居宅介護支援)とは?わかりやすく解説
記事を読む >
訪問入浴介護サービスとは?料金や利用対象者をわかりやすく解説
記事を読む >
訪問リハビリテーションとは?サービス内容や料金をわかりやすく解説
記事を読む >
デイケア(通所リハビリテーション)とは?利用料金やサービス内容をわかりやすく解説
記事を読む >
小規模多機能型居宅介護とは?3つのサービス内容とメリット・デメリット
記事を読む >
居宅療養管理指導を利用する3つのメリットとは?料金やサービス内容も解説
記事を読む >
福祉用具貸与とは?介護保険でレンタルできる13種目一覧
記事を読む >
特定福祉用具販売とは?介護保険が利用できるのはこの種類!
記事を読む >
住宅改修とは?介護保険でできる上限20万円の介護リフォーム
記事を読む >
定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは?わかりやすい料金やサービス内容
記事を読む >
夜間対応型訪問介護とは?利用できる対象者や料金をわかりやすく解説
記事を読む >
介護サービスにはどんな種類がある?サービスごとの特徴や利用条件を解説
記事を読む >
訪問看護とは?サービス内容や料金、医療保険と介護保険の違い
記事を読む >