「住み慣れた土地で自分らしい生活を継続したい」。小規模多機能型居宅介護は、そんな思いを持つ高齢者を支える介護保険サービスです。ひとつの事業所が「通い」「訪問」「宿泊」の3つのサービスを提供します。
小規模多機能型居宅介護を利用するメリットや特徴、料金、看護小規模多機能型居宅介護との違いなどについて解説します。
小規模多機能型居宅介護は3つのサービスを包括的に提供してくれるっポ。
小規模多機能型居宅介護は、地域密着型サービスのひとつ。地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れた自宅での生活を継続できるように各自治体が管轄する介護保険サービスです。
この小規模多機能型居宅介護は、介護を必要とする人やその家族の痒いところに手が届くサービスと言っても過言ではありません。
在宅介護では、施設に通って食事や入浴、レクリエーションを行うデイサービス、ヘルパーが自宅に来てくれる訪問介護のほか、短期間宿泊できるショートステイを利用することが多いかもしれません。
「通い」「訪問」「宿泊」、この在宅介護に欠かせない3つのサービスを組み合わせ、ひとつの事業所でまかなうのが小規模多機能型居宅介護です。
小規模多機能型居宅介護のサービスは、「通い」を中心に要介護者の生活を24時間支えることが可能なので、一人暮らしの高齢者や老老介護をしている家庭も安心して在宅生活を継続できます。
利用できるのは、その市区町村に住む要支援1・2、要介護1~5の人です。
通ったり、来てくれたり、泊まったり……いろんな使い方ができるのが便利でいいね。
看護小規模多機能型居宅介護っていう、似たような名前のサービスもあるっポ!
看護小規模多機能型居宅介護は、小規模多機能型居宅介護に加えて「訪問看護」が利用できるサービスです。看護師が自宅に訪問して、在宅酸素や人工呼吸器などの医療機器の管理、褥瘡(床ずれ)の処置、末期がん患者へのペインコントロール(疼痛管理)など、医療行為が必要な高齢者のケアを行います。
医療ニーズへの対応が難しい小規模多機能型居宅介護に対し、看護小規模多機能型居宅介護なら安心して自宅療養ができるでしょう。
なお、看護小規模多機能型居宅介護を利用できるのは、その地域に暮らす要介護1~5の人です。小規模多機能型居宅介護と異なり、要支援1・2の人は利用できません。
医療ケアもしてくれるなら、自宅での暮らしを続けやすそうだなあ。
小規模多機能型居宅介護の「通い」「訪問」「宿泊」は、デイサービス、訪問介護、ショートステイに似ているけど、少し違うんだよ。
まず、小規模多機能型居宅介護の「訪問」と通常の訪問介護サービスの違いから説明します。
通常の訪問介護は、30分や1時間など時間でサービス枠が決まっています。しかし、小規模多機能型居宅介護は時間の縛りがないため、「毎日5分だけ安否確認に来てもらう」、「寝る前の15分間、着替えの手伝いをお願いする」といった利用も可能です。
寝たきりの人であれば、排泄介助や体位交換(寝返りを打たせること)のために、1日に何度も訪問してもらうこともできます。
このように、小規模多機能型居宅介護の「訪問」は、在宅介護をするなかでの「ここだけを手伝って欲しい」というようなピンポイントの要望に応えられるサービスなのです。
つぎに、小規模多機能型居宅介護の「通い」とデイサービスの違いについて。
要介護者のデイサービス利用が増える一方、デイサービスを利用している人のなかには、「1日利用は長い」と感じている人も多いものです。半日のみの利用などもありますが、一般的なデイサービスは、朝の送迎からはじまって入浴、食事、レクリエーションと1日のプログラムが定められています。
対する小規模多機能型居宅介護の「通い」なら、一人ひとりにあわせて入浴や食事だけの短時間や、ゆっくりお茶だけ飲みに行くなどの利用も可能です。ただし、「通い」は通常のデイサービスに比べ、個々の時間を自由に過ごすという持ち味があるので、デイサービスのようなレクリエーションを楽しみにしている人には不向きかもしれません。
最後に、小規模多機能型居宅介護の「泊まり」とショートステイの違いについて。
ショートステイは、利用したい日程を決めて予約を入れるのが一般的です。ただし、人気のあるサービスなので、希望日に予約が取れないこともしばしばあります。その場合、他の施設を探すか、日程を変更するかという対応をせざるを得ません。そのため、利用者はまったく知らない初めての施設に泊まらなくてはならないこともあります。
一方、小規模多機能型居宅介護の「泊まり」の場合は、予約がいっぱいで利用できないということがほぼありません。さらに、「通い」からそのまま「宿泊」ができるので、引き続き、同じ場所で馴染みのある職員によるケアを受けられます。利用者本人はもちろん、家族も安心して利用できるでしょう。
既存サービスに比べると、時間帯なんかの要望が叶いやすくて、すべてのサービスで馴染みのスタッフが対応してくれるってことだね。
利用を検討するなら、メリットだけじゃなくてデメリットも知っておくっポ。
包括的なサービス利用ができる
「通い」「訪問」「宿泊」のサービスをひとつの事業所が提供するため、枠にとらわれない柔軟な組み合わせでサービスを利用できます。回数や時間にも制限がないため、ちょっとした要望にも応えてもらいやすいでしょう。利用者一人ひとりのニーズに合わせたサービスは、在宅生活をする高齢者や家族の支えになります。
また、「訪問時に食欲がなかった」「通所時に不安定な様子があった」などもスタッフ感で共有しやすい環境のため、家族は安心してお願いしやすくなります。
馴染みのスタッフが3つのサービスを提供する
小規模多機能型居宅介護では、常に顔馴染みのスタッフによるケアを受けることができます。通常のデイサービスやショートステイを利用する場合、たとえ同じ施設であってもデイサービスとショートステイに配属される職員は異なることが多いものです。
しかし、小規模多機能型居宅介護なら「通い」「泊まり」だけでなく、「訪問」でも馴染みのあるスタッフが対応するので安心です。
高齢者が新しいサービスを受け入れやすい
年齢を重ねるにつれ、新しい物事を受け入れるのに時間がかかる人が多くなります。小規模多機能型居宅介護は、そのような人のサービスへの抵抗感を軽減させる効果が期待できます。
たとえば、認知症を持つ人が初めてショートステイを利用する場合、場所に慣れずに混乱してしまうことがあります。小規模多機能型居宅介護の宿泊サービスなら、普段から通っているデイサービスのある場所で顔馴染みの職員が対応するため、落ち着いて過ごすことができるのです。
家族の介護負担を軽減できる
家族が外出する隙間時間などにあわせた柔軟なサービス利用をすることで、家族の介護負担やストレスを軽減できます。
また、ショートステイは予約が取りにくいというデメリットがありますが、小規模多機能型居宅介護の「泊まり」は、予約がとりやすい傾向です。そのため、冠婚葬祭や旅行などの外出時やゆっくり体を休めたいときなどに利用しやすくなっています。
費用が定額でわかりやすい
費用が定額制でわかりやすいのも嬉しいポイントではないでしょうか。便利な介護サービスをいろいろと利用したいものの費用が心配という人は多いものです。小規模多機能型居宅介護は月額定額制のため、必要なサービスを必要なだけ利用できます。
メリットがいっぱいあるんだなあ。確かに、常に顔見知りのスタッフが対応してくれれば安心して利用できるよね。
デメリットなんてあるのかな?
定員が少人数
多くのメリットをもつ小規模多機能型居宅介護にもデメリットはあります。小規模多機能型居宅介護は、その名の通り「小規模」の施設です。そのため、事業所登録人数29名、1日あたりの「通い」15名(条件により18名)、1日あたりの「泊まり」9名という定員数があります。そのため、稀に希望日にサービスが受けられない恐れがあるのです。
併用できない介護保険サービスがある
小規模多機能型居宅介護はデイサービスやショートステイ、訪問介護などの介護保険サービスと併用ができません。
そのため、小規模多機能型居宅介護を利用する場合は、それまで利用していたサービスが利用できなくなります。これはケアマネジャーに関しても同様で、小規模多機能型居宅介護には専属の施設ケアマネジャーがいるため、それまでの居宅のケアマネジャーは担当できません。
ケアマネジャーや訪問ヘルパーなどとの信頼関係をイチから築くことが必要になるでしょう。
併用できるサービスとしては、訪問看護や訪問リハビリなどの医療系、福祉用具や住宅改修などが挙げられます。
また、「通所はいいけど宿泊は他の施設がいい」というようなサービスの選択ができないのもデメリットといえるでしょう。
サービスの併用ができないなら、ケアマネとよく相談したほうがいいかもなあ……。
小規模多機能型居宅介護には、施設を運営していくうえでの人員基準があるっポ。人員基準がわかればサービス内容も想像しやすいから、確認してみてね。
小規模多機能型居宅介護には、どんな職種の人が配置されているのでしょうか。看護小規模多機能型居宅介護の人員基準との違いと一緒に見てみましょう。
代表者、管理者
認知症対応型サービス事業開設者研修を修了していることが必須です。ただし、看護小規模多機能型居宅介護は保健師や看護師であれば従事可能となります。
ケアマネジャー
小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を修了したケアマネジャーを1人以上配置します。
日中のサービス従業者
小規模多機能型居宅介護は、通いサービスの利用者3人に対して1人以上+訪問サービスに対応する職員が1人以上必要です。
一方、看護小規模多機能型居宅介護の場合は、通いサービスおよび訪問サービスにあたる従業者のそれぞれ1人以上が看護師や准看護師、保健師でなくてはなりません。さらに、訪問サービスを提供する際は2人以上の人員を配置する必要があります。
夜間のサービス従業者
宿泊と訪問サービスを提供するためには、宿直を含む夜勤の職員2人以上の配置が必要です。ただし、宿泊利用者がいないときは置かなくてもよいとしています。
看護職員
小規模多機能型居宅介護は看護職員を1人以上配置します。一方、看護小規模多機能型居宅介護は2.5人以上の配置が必要です。
ちゃんとスタッフの専門性や人数が定められていると安心だね!
小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護の利用料金は、月額制になるっポ。
要介護度による料金は以下の通りです。
小規模多機能型居宅介護の月額料金表
看護小規模多機能型居宅介護の月額料金表
これらは自己負担率が1割負担の人の料金です。自己負担割合は所得によって1~3割と異なります。また、ここでは1単位=10円で計算していますが、地域によって違いがあるので注意しましょう。
「泊まり」を利用する場合は、上記の金額とは別に1日あたり1,000~3,000円程度の宿泊費も必要です。このほか、食費やおむつ代、日用品の費用などがかかります。
詳しい料金については、担当ケアマネジャーに相談したり、直接問い合わせをしたりして確認することをおすすめします。なお、月途中でサービスを開始した際の料金は日割りとなります。
小規模多機能型居宅介護の利用を想定して料金のシミュレーションをすると、以下のようになります。
(シミュレーションの条件)
要介護度:要介護3
1カ月の利用:通い18回、訪問4回、泊まり4回
自己負担割合:1割
(1カ月料金シミュレーション)
月額料金:22,157円
食費:15,000円=500円×30食(通い18食+泊まり12食)
宿泊費:6,000円(1,500円×4回)
合計43,157円
サービス利用には食費などが発生するので、上記のように月額料金以外にもお金がかかることがわかるでしょう。
また、上記はあくまで一例です。食費や宿泊費、その他、各種加算については、利用状況や各事業所によって異なります。
小規模多機能型居宅介護を利用する際、月額料金や食費、おむつ代などのほかに以下のような料金が追加される場合があります。
初期加算
利用を開始してから30日間は、1日30円が加算されます。
認知症加算
条件により、1カ月800円もしくは500円が加算されます。
看護職員配置加算
利用する事業所が、常勤の看護師を1名以上配置している場合は1カ月900円、准看護士なら1カ月700円、看護職員を常勤換算方法で配置している場合は1カ月480円が加算されます。
サービス提供体制強化加算
事業所で働くサービス従業者の5割以上が介護福祉士の場合は、1カ月640円が加算されます。4割以上なら1カ月500円です。さらに、サービス従業者の6割以上が常勤職員であったり、3割以上が勤続3年以上であったりすると1カ月350円が加算されます。
なお、上記の料金は1単位10円・1割負担で計算しています。地域や負担割合により金額は異なりますのでご注意ください。詳しい加算内容については、各事業所にお問い合わせください。
想定外のお金がかからないか、ちゃんと確認したほうがよさそうだね。
利用したいと思ったら、以下の手順が主な流れになるっポ。
(1)担当ケアマネジャーに相談
小規模多機能型居宅介護を利用したいと思ったら、まず担当ケアマネジャーにサービスを利用したいと伝えましょう。ケアマネはサービス利用を検討し、利用者の住んでいる地域にある小規模多機能型居宅介護の空き状況を確認してくれます。
(2)施設見学へ
必要に応じて見学や体験をします。
(3)契約
利用の決意がかたまったら、事業所との面談、契約の運びとなります。その際、小規模多機能型居宅介護には施設の専属ケアマネジャーがいるため、担当のケアマネジャーが変更となります。
(4)ケアプランの作成
計画作成担当者が、利用者や家族の意向などを踏まえて新たなケアプランを作成し、サービス開始です。
小規模多機能型居宅介護は「通所」「訪問」「泊まり」の3つのサービスが利用できるし、看護小規模多機能型居宅介護なら「訪問看護」を加えた4つのサービスが使えるっポ。
柔軟な組み合わせのサービス利用と、顔見知りのスタッフにケアしてもらえるのが大きな魅力。住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けたいって人には向いているサービスじゃないかな。
*自治体や事業所により、ここで説明した内容と異なる場合があります。詳細に関しては、必ず各自治体・事業所にお問い合わせください。
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