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認知症の母親を一人にできない…在宅介護を続けられる介護サービスはある?

認知症の母親を一人にできない…在宅介護を続けられる介護サービスはある?認知症の母親を一人にできない…在宅介護を続けられる介護サービスはある?
はーとん

ひとりでの留守番が困難になった認知症の母親を心配する相談者。ご家族は在宅介護を続けたいと思っているようだっポ。
仕事と介護を両立できるような介護サービスはあるのかな?

相談:認知症の母が心配。一人での留守番を可能にする介護サービスは?

<めぐみさん(仮名)56歳>
82歳の母には認知症があり、要介護2です。母は一人暮らしでしたが、認知症になり単身での生活が難しくなったため、1年半前から娘の私と夫とで同居しています。
私たち夫婦はフルタイムで仕事をしており、日中は母ひとりで過ごすことが多い状況です。

母は認知症が進行してきたようで、出掛けたまま迷子になって家に帰れなくなったり、準備しておいた昼食を食べなかったりすることがここ2、3か月で徐々に増えました。

本人が介護サービスの利用を嫌がっているので避けてきましたが、そろそろ家族だけの介護に限界を感じています。

デイサービスに問い合わせをしてみたところ、迎えは朝9時頃で16時頃には帰宅すると言われました。一人の時間は減るものの、それでもある程度の時間は母ひとりで留守番することになるので心配です。

ちなみに、現時点で母の施設入居は考えておらず、できるかぎり自宅で面倒を見たいと思っています。

寺岡純子さん(主任介護支援専門員/看護師)からのアドバイス
認知症の初期なら、都度の説明や見守りなどをすれば身の回りのことは自分でできるでしょう。しかし認知症が進行すると日常生活が困難になり、危険が生じる場面も多くなります。
こうなると目が離せず、一人での留守番が難しくなります。

めぐみさんはお母さまの意思を尊重し、デイサービスなどを利用せず家族で介護をされてきました。しかし常に見守りが必要な状況となれば、介護サービスを利用する段階になったと言えます。

ご家族の生活を犠牲にせず、在宅介護の継続ができるような介護サービスについてアドバイスしました。

認知症の方を一人にすると心配な理由

認知症は、脳の細胞がダメージを受けて起こる病気です。ダメージを受けた部位によってさまざまな症状が出現しますが、主に見られる症状のひとつが物忘れです。この物忘れは加齢に伴うものとは違います。

加齢による物忘れでは、よく考えたりヒントがあったりすれば思い出すことが可能です。しかし、認知症による物忘れは記憶障害なので、その出来事や方法自体を思い出せません。

そのため認知症が進行すると、それまで使えていた電化製品の使い方や、大事なもののしまい場所がわからなくなるようなことが増えます。
ある日突然家に帰る道や方向が分からなくなり、やみくもに自宅を探して迷子になってしまうようなケースもあります。

これらの行動が現れると、自らの体に危険を及ぼしたり火災を起こしたりするリスクが増えます。そのため認知症が進行すると、ひとりでの留守番が難しくなるのです。

無理のない介護を目指し、まずは同居家族の生活を把握した

家族による在宅介護は多くのストレスがかかります。また、親の介護をする世代は仕事をしながらの介護が多くなります。
そのため同居家族の介護では、過度なストレスを避け、仕事と介護の両立をできるようにすることがもっとも大切であると言えるでしょう。

めぐみさんのケースでは、まずご夫婦の生活スタイルになるべく支障が出ないよう、お二人の生活状況を把握しました。

朝起きると7時に夫婦で朝食をとり、旦那さまは7時半に家を出て車で通勤します。帰りは19時頃ですが、残業になると21時を過ぎることもあるようです。

めぐみさんは8時に家を出て自転車で通勤し、18時頃には帰宅します。しかし、奥さまも急な残業や宿泊を伴う出張がときどきあるとのことです。

家事全般は主にめぐみさんが担っていますが負担には感じておらず、ご夫婦ともに土日休みのため週末は外出や小旅行などでリフレッシュしているとのことでした。

こういったお二人の生活スタイルをいかに維持できるかが、自宅での介護を成功させるカギになります。

母親の介護で家族ができること、困ることを整理

めぐみさんは食事作りや掃除などの家事は負担に感じておらず、継続が可能と判断できます。
しかしお母さまの食事に問題があるようでした。

以前は夫婦が残業で帰りが遅くなると、お母さまは家にあるものを自分で準備して食べていました。
ですが最近では、準備しておいた昼食を食べずに残してあったり、電子レンジを使用できずに温められなかったりなど、食事の準備にも介助が必要になってきました。

認知症が進行してきたため、日中お母さまが一人になる時間をなるべく減らす必要がありそうです。

デイサービスに通ったとしても、デイサービス帰宅後からめぐみさんが帰るまでの夕方の時間帯に一人で外出してしまうなどのリスクが考えられます。
認知症の方には、夕暮れ時になると症状の悪化が見られるケースがあるのです。

この他にも、急な残業や泊りがけの出張があった場合などの不安を解消できるサービスが必要と考えられます。

認知症の介護で必要となるサービスとは

在宅介護で利用できる主な介護サービスは、ヘルパーなどに自宅に来てもらう「居宅サービス」、デイサービスのように食事や入浴、レクリエーションなどをしながら数時間を過ごす「通所サービス」、介護施設に宿泊する「短期入所サービス」です。

認知症の方には、以下のような役割を持つ介護サービスが必要となります。

  • 家事や入浴など身の回りの支援を受けられるようにする
  • 家族以外の人と接する機会を持つ
  • 家族の休息の時間を得られるようにする
  • 水分の摂取や服薬、安全の確保ができているかなどの見守りや安否確認

認知症の介護では、状況に応じた柔軟なサービスが必要になります。薬を飲んだかを確認するだけ、外出していないか確認するだけなど、短時間で頻回の訪問が望ましい場合も多く見られます。
状況に応じて、必要な介護サービスを単独でまたは組み合わせて利用するようにします。

お母さまのケースでは、以下のような介護サービスが検討されましたが、それぞれにメリット・デメリットがあります。

訪問介護

自宅にヘルパーが来るため、生活環境を変えずに介護を受けられるのがメリットです。
しかし、時間やサービスの内容はあらかじめ決まっているため、「急に残業になったから夕食を作ってほしい」と希望しても対応が難しい場合がほとんどです。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

必要があれば1日に何度も訪問してくれ、もし急な用事ができても柔軟なサービス提供が可能です。
奥さまは家事の負担を感じておらず、普段から食事も作り置きしています。長時間の家事援助は必要としないため、訪問介護よりも使い勝手はよさそうでした。

ただし費用が月額制のため、あまり利用しないと割高になってしまう可能性があります。

デイサービス

施設へ送迎してもらい、入浴や昼食、機能訓練などの介護サービスを受けます。多くの場合は、朝9時頃にお迎えがあり、夕方16〜17時頃に帰宅します。
デイサービスはたくさんあるので、サービス内容や雰囲気、半日でも利用できるかなどで探すことが可能でしょう。

デメリットとしては、送迎は利用者数人の乗合であることが多いため、デイサービスの都合で送迎時間が設定されます。
サービスの提供時間も決まっているので、家族に急な残業などがあれば長時間一人で留守番をする必要も出てきます。

ショートステイ

高齢者が施設に宿泊をして、介護を受けることができます。1日から利用できるので、家族に泊まりの用事などがあるときに便利です。
一方で、予約が取りにくいといったデメリットがあります。

小規模多機能型居宅介護

通い、訪問、宿泊を、都合に合わせて利用できる柔軟なサービスです。顔見知りのスタッフが、通い、訪問、宿泊のサービスを提供するので、利用者にとって安心感があります。

しかし、すでに介護サービスを利用している場合には、現在のケアマネジャーからその施設のケアマネジャーに変更する必要があります。

夫婦が選んだ介護サービスは「小規模多機能型居宅介護」

めぐみさん夫妻には、とにかくお母さまが一人で過ごす時間を減らしたいという希望がありました。お母さまのご様子からも、安全確保のためにはそれが望ましいと思われました。

デイサービスだと終了時間が早く、夕方に一人の時間ができてしまいます。また、要介護2ではデイサービスや訪問介護を利用できる回数がそれほど多くありません。
夫妻の出張はあらかじめの予定が組みにくく、1、2ヶ月前に予約が必要なこともあるショートステイは利用しにくいようでした。

検討の結果、泊まりのサービスも利用しやすい小規模多機能型居宅介護を利用することにしました。

朝、旦那さまが出勤時にお母さまを車で施設に連れて行き、仕事が終わったら迎えに行くようにしました。
介護サービスに乗り気でなかったお母さまですが、そうすることで特に拒否もなく週5日の通いの利用ができています。

急な残業があったとしても、連絡をすれば迎えに行くまで施設で過ごさせてもらえます。もしお迎えが夜中になりそうなら、そのまま泊まりのサービスを利用させてもらえるようでした。

夫妻は安心して仕事に打ち込める環境が得られ、ストレスの蓄積もなく仕事と介護の両立が図れているそうです。

まとめ

認知症の介護では、症状の程度に応じて必要となる介護が変化します。
介護サービスにはたくさんの種類があるので詳細を理解するのは難しいかもしれませんが、ケアマネジャーに希望する介護のかたちをしっかりと伝えてください。

ご本人の意向や希望を大切にしながら、介護するご家族の生活も守ることが重要です。

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著者:寺岡 純子

著者の画像

著者:寺岡 純子

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合同会社カサージュ代表
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、終活カウンセラー1級
8年間の臨床看護を経て、介護保険の開始に伴い介護業界へ転向。全国展開する大手介護事業者で部長職としてさまざまな介護サービスの運営・人材育成を経験する。医療・介護の幅広い知識と経験を多くの介護事業者に届けたいとの思いから独立。現場・事業者・利用者の視点に立ち、介護に特化した研修や事業者・介護者のサポートを行っている。

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