江戸川区にある医療法人社団しろひげファミリーでは、在宅医療を専門とするしろひげ在宅診療所を中心に、患者様の在宅生活をサポートする看護・介護サービスも提供しています。
「患者様とご家族の幸せな在宅の時間を創りたい」との強い思いを持つ山中光茂院長に、患者様の最期の一瞬まで寄り添う姿勢について伺いました。
――しろひげ在宅診療所はどのような思いのもとで開院されたのですか?
国は20年以上前から自宅でお看取りができる体制をつくろうと言っていますが、実は現在でも自宅で最期を迎えたいと考える多くの方が病院でお亡くなりになっています。
在宅診療所は全国的に増えていますが、その中身を見ると非常勤やアルバイトの医師しかいなかったり、夜間はコールセンターで対応するのみだったりというクリニックがたくさんあります。
そういうクリニックは、延命治療を望まない患者様でもすぐに救急搬送してしまうことがあり、望んでいないにも関わらず病院でお亡くなりになる患者様も少なくありません。
その結果、在宅での看取り率は全国で15パーセント前後しかなく、この数字は約20年前からほぼ変わっていません。
こういった状況を受けて、しろひげ在宅診療所は最期までご自宅で看られるクリニックにしたいと思っていました。それを実現するためには、24時間365日で手厚いサポートできる体制が必須のため、常勤の医師とスタッフで開業することにしました。
また、患者様の生活を支えているのは、当院だけではありません。地域にはたくさんの医療・福祉職の方々がいるため、こうした関係職種ともネットワークを作り「しろひげ在宅診療所は連携しやすい」「夜間や土日でも救急車を呼ばずにまず来てくれる」と信頼してもらえるクリニックを目指しました。
<しろひげ在宅診療所 外観>
――開院当時の思いは実現できましたか?
現在、しろひげファミリーには医師や看護師、介護職を含む約180人の職員がいますが、全員が常勤で働き、24時間365日体制で患者様をサポートできる体制が整っています。
実は開業してからの6年間、患者様はひとりも断っていません。「骨折したからそれだけ診てほしい」など1回きりのご依頼や、距離でお受けできない(注:訪問診療は、医療機関と訪問先が16キロを超えるとできない決まりがある)以外は、重症度が高い方、病院に行けない方、行きたくない方など、すべてお受けしています。これも、常勤スタッフのみで在宅診療をしているからこその結果です。
「最期まで自宅で看る」という点についても、しっかりと実現できています。当院の在宅看取り率は約80パーセントで、全体平均の17パーセントを大きく上回っています。
また、私たちの患者様の多くは地域の介護職からのご紹介です。他にもケアマネジャー、訪問看護、薬局などから紹介いただいています。これは介護・医療に関わる地域の方々に信頼いただいている証なので、私たちの自慢と言えます。
<しろひげ在宅診療所 外観>
――なかには病院での看取りを希望される患者様もいらっしゃいませんか?
自宅よりも病院での看取りの方がいいのではないかと相談を受けることもあります。そうした患者様やご家族によくよく話を聞くと、主にふたつの理由があります。
ひとつ目は「自宅では、身体的な苦痛が十分に取り除けないのではないか」ということです。
この相談には「私たちは苦しみを緩和できるので、絶対に苦しむことはありません」とお伝えしています。世の中で「絶対」と言えることは少ないですが、安心していただくためにもあえて「絶対」と言い切っています。
重い病気は病院でしか診られないんじゃないか、自分自身が苦しまないためには病院で看取ってもらったほうがいいんじゃないか、と考える患者様にはこの部分をしっかりとお伝えして訪問診療を受けていただいています。
しろひげ在宅診療所では、年間250人近く、合計1,000人以上の方々をご自宅でお看取りしてきましたが、最期に苦しんで亡くなられた方はほとんどいらっしゃいません。
病状が変化するなかで一時的に苦しみが出ることがあっても、連絡をもらえれば医師がすぐに伺って苦しみを緩和します。
――患者様が病院で看取ってほしいというふたつの理由のうち、ふたつ目は何ですか?
ふたつ目は「家族に介護負担をかけたくない」ことです。そもそも24時間の介護は病院や施設でしかできないと思う方も多いのではないでしょうか。
このような方には、「ご家族に介護負担がかかることは絶対にない」とお伝えしています。これもあえて「絶対」と言い切ります。
当院の患者様の約25パーセントは一人暮らしでベッドから動けない状態の方ですが、それでもご自宅で生活することができています。
介護が大変だというご家族がいらっしゃいますが、実はその多くが「自分でできるので介護士さんや看護師さんは入らなくても大丈夫」と、ご自身だけでがんばっているからなんです。
病状が落ち着いているときはご家族だけで介護ができていても、病状が進行すると介護が大変になってしまいます。そうなると、身体的・時間的な負担が大きいだけでなく、患者様との最期の時間が思い通りに叶えられなくなってしまう。せっかく在宅診療を選ばれたのに、これでは本末転倒ですよね。
そのため、当院では「地域の介護職や相談員にも協力してもらい、みんなで一緒に患者様の最期をいいものにしていきましょう」とお話しています。当院は江戸川区に根付いて活動しており、地域の医療・介護職の方々とも密に連携をとっているため、こうしたサポートが実現できています。
――しろひげ在宅診療所は、自宅で最期を迎えたい方の強い味方ですね。
私たちは、しろひげ在宅診療所を始めた頃の原点の思いを大事にしています。
どれだけ重症度の高い患者様でも、断ることなく受け入れる。そして、身体だけでなく、患者様やご家族の心も含めて最期までしっかりと看取ります。
そのために、常勤の医師とスタッフが責任と覚悟を持って24時間365日対応し、ご自宅で安心して医療が受けられる環境を作っていきます。
また、私たちは医療技術にも自信を持っています。病院と自宅では医療資源に違いがありますが、そんな状況でも最善の医療が提供できるように日々、専門職ががんばっています。
しろひげ在宅診療所では、これからも一人ひとりの当たり前の幸せを支えることに尽力していきます。
関連記事
新着記事