「“高齢者”という呼び方に違和感がある」「もっとかっこいい呼び方はないのだろうか」と悩んだことはありませんか? 単に「老人」「年寄り」などと呼ぶのは、失礼にあたる可能性があるので避けたいところです。
相手への敬意を示しつつ円滑にコミュニケーションできる、おすすめの「高齢者のかっこいい呼び方」をご紹介します。
世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上の人を高齢者としています。しかし、高齢者の定義に厳密なルールはなく、制度や法令によって基準はまちまちです。
たとえば、医療保険における自己負担の割合は、70歳未満が3割、70歳〜74歳が2割、75歳以上が1割としています。また、改正道路交通法や所得税法上の老人扶養親族の基準では、70歳以上の人が高齢者に当てはまります。
一方で、定年退職の年齢を60歳としている企業も多いなど、制度や目的によって高齢者の基準は大きく異なっています。
「高齢者」に近い言葉や言い換え表現は従来から存在しています。たとえば、「老人」「お年寄り」「年配者」「老齢者」「熟年者」「シルバー」などが代表的な表現です。
しかし、これらの呼び方は「年を取っている」という印象を与えやすく、場面によっては相手を不快にさせかねません。そのため、状況や相手に応じて適切な表現を選ぶことが大切になります。
現代の60代・70代は元気で若々しく、旅行や趣味、ボランティアなどアクティブに過ごす方も少なくありません。
そのため、従来の「高齢者」や「お年寄り」といった呼び方は、活動的で個性豊かな現代の高齢者像とは合わなくなっています。
実際、2022年時点の健康寿命は男性が72.57歳、女性が75.45歳であり、70歳を過ぎても多くの人が健康を維持しています。
こうした背景もあり、単に「高齢者」「お年寄り」と呼ぶと、ネガティブな印象を与えてしまう可能性があるため注意が必要です。
現在の活動的で個性豊かな高齢者のイメージに合う、新しい呼び方はたくさんあります。前向きで相手を不快にさせない呼び方を、イメージ別に紹介します。
高齢者に対する呼び方は時代とともに変化しています。まずは、前向きでポジティブな印象を与える呼び方の例をみていきましょう。
「アクティブシニア」は、活動的なライフスタイルを楽しむ高齢者を指します。
年齢を重ねても新しいことにチャレンジする姿勢を称賛する意味が込められており、とくにスポーツや地域活動に積極的に参加している方にぴったりの表現です。
単に年齢を示すだけでなく、その行動力や意欲を前向きに捉えた呼び方でもあるため、周囲にも好印象を与えます。
「グランドジェネレーション」は「最上な世代」と訳され、前向きで尊敬の意味が込められた呼び方です。略して「G.G.」と呼ばれることもあります。
年齢を重ねたことによる豊富な知恵や経験を持ち、社会や家庭で頼れる存在を意味します。
単なる年齢ではなく、人格や人生経験を称えるニュアンスも含まれているので、尊敬や感謝の気持ちを込めて使える言葉です。
「エルダー世代」は、英語の「エルダー(elder)」に由来し、年長者や長老を意味する言葉です。
地域社会やコミュニティの中でリーダーシップを発揮し、積極的に活動や消費をする意欲的な高齢者を意味します。
ただ年齢を示すのではなく、その行動力や影響力を前向きに捉えた呼び方をしたいときにぴったりです。
「プラチナ世代」は、シルバー世代に代わる前向きな呼び方として生まれた言葉です。
金属の価値になぞらえて、「シルバーよりも輝くプラチナのように」というポジティブな意味が込められています。
「高齢者」に代わる、健康でアクティブなライフスタイルを楽しむ年配者を称える言葉のひとつです。
「サードエイジ」は、人生を4つのステージに分けた場合の3つ目の段階を指す言葉です。働き盛りのキャリアを終えた直後の時期で、人生に一区切りをつけた年代にあたります。
サードエイジに当たる人は、自分の生き方や趣味、学びを大切にし、アクティブに活動する傾向です。自由な時間を活かして自己実現や社会参加を楽しむ高齢者を、ポジティブに表現する呼び方といえます。
高齢者の別の呼び方として、経験や知恵の深さを感じさせる表現もあります。
ここでは、敬意や重みを伴った表現を紹介します。
「シニア世代」は、英語の「シニア」が示す年長者や上級者の意味を背景にした呼び方です。年齢層に明確な定義はありませんが、一般的に転職市場などではおよそ55歳以上をシニア世代と呼んでいます。
趣味や旅行、ボランティア活動などさまざまな分野で積極的に活動する姿をイメージできる表現です。経験や行動力を伴う高齢者に対する、敬意を払った呼び方として用いられます。
「ベテラン世代」は、豊富な経験と実績を持ち、成熟した視点や判断力を備えた年齢層を指す呼び方です。若い世代にとっては、よき指導者や相談相手となる存在であり、その知識や経験に敬意を込めて多く使われます。
仕事や地域活動などで中心的な役割を果たす方々に対して、感謝や尊敬を示す前向きな表現として使いたい場合におすすめです。
「人生の大先輩」は、人生経験が豊富で、困りごとやトラブルに直面したときに頼りにしたい存在を指す呼び方です。
「ベテラン世代」と意味が似ていますが、仕事や趣味、家庭生活などさまざまな場面で培われた知恵や洞察力を強くイメージさせます。
敬意や感謝の気持ちを込めて使える、前向きで温かみのある表現です。
「人生の師」は、自分の成長や学びを支えてくれた尊敬すべき存在を指す表現です。
特定の個人に使われることが多いですが、高齢者や先人全般を指すときにも使えて、後世に影響を与えた経験豊かな人物への敬意を表現できます。
人生経験に基づく知恵や教えを受けた相手に対して使うことで、感謝や尊重の気持ちも自然に伝わる呼び方です。
熟練者は、たくさんの経験と知識を積み重ねてきた人を指すのにおすすめの呼び方です。
高齢者を熟練者といい換えることで、年齢に伴うネガティブな印象が和らいで、社会的価値を強調できます。
年を重ねることを経験豊富な資産として捉えることで、年齢にまつわる偏見を改善でき、尊敬すべき立場の人と表現できるでしょう。
高齢者をかっこいい呼び方で呼ぶときも、言葉の選び方には配慮が必要です。呼び方次第で相手に与える印象が変わるため、注意すべきポイントを押さえましょう。
高齢者は人生の大先輩であるため、これまでの経験や立場を尊重する表現を選ぶことが大切です。「ご年配の方」「ご高齢の方」といった丁寧で中立的な呼び方は、敬意と配慮を示せます。
一方で、「老人」「年寄り」などの古びた印象を与える言葉は、相手を不快にさせるおそれがあります。状況や相手に応じた言葉選びを意識し、自然でポジティブなコミュニケーションを心がけましょう。
高齢者の呼び方は、相手との関係性や場面に応じて使い分けましょう。
家族や親しい人との会話では、「おじいちゃん」「おばあちゃん」といった親しみのある呼び方が温かみを感じさせます。一方で、ビジネスや公的な場では「○○様」「ご利用者様」など丁寧で中立的な表現が適しています。
また、接客や介護の現場などでは、名前に「さん」を付けて呼ぶことで、距離感を適切に保ちながら親しみを伝えられることもあります。
ただし、親しみを重視するあまり「〇〇ちゃん」などと呼ぶのは敬意に欠ける印象を与えるため、注意しましょう。
高齢であることを強調しすぎると、相手に不快感やネガティブな印象を与えてしまいます。
そのため、年齢よりも経験や知識に焦点を当てた表現を使うと、肯定的で尊重の意を伝えやすくなります。
「人生の大先輩」や「ベテラン」といった言い方は、年齢を前面に出さずに相手の価値や実績を称えることができ、悪い印象になりにくいのでおすすめです。
特定非営利活動法人 老いの工学研究所が「高齢者の呼び方に関する調査」を行っています。この調査では、「シニア」「シルバー」「高齢者」「老人」「年寄り」「じいさん・ばあさん」といった呼称をどのように感じるかを幅広い世代に尋ねています。
調査の結果、「老人」や「年寄り」といった呼び方に前向きな印象を持つ人は、20代から80代までの全世代で3%以下と非常に少ないことがわかりました。
さらに、年代が上がるほど「じいさん・ばあさん」と呼ばれることをネガティブに感じる傾向もあります。
一方で「シニア」という呼び方は、もっともポジティブに受け取られる結果となりました。
調査の結果から、高齢者自身は自分の年齢がもたらす従来のイメージよりも、若々しさや個々の経験・知識、ライフスタイルを重視してほしいと考えていると想定できます。
高齢者とのコミュニケーションでは、言葉の選び方ひとつで相手に与える印象や関係性が変わるため、呼び方に悩む場面も多くあります。
ここでは、高齢者の呼び方に関してよくある質問とその回答をまとめました。
「お年寄り」や「老人」といった言葉は、使い方次第で相手に失礼と受け取られてしまいます。家族や親しい関係では多少くだけた表現も使えますが、ビジネスや介護などの場面では注意が必要です。
迷ったときは、丁寧語と敬語を組み合わせた表現を用いるだけでも、相手への配慮を示せます。
「ご高齢の方」「ご年配の方」といった表現は、男性・女性問わず使える中立的な言い回しです。
ただし、個人を指す場合には、相手の希望や慣習に合わせて「○○様」「○○さん」と名前を用いると柔軟で丁寧な印象が伝わります。
場面や関係性に応じて適切な呼び方を選びましょう。
介護の現場では、個人の尊厳を守ることが大切です。名前で呼ぶことで個人への敬意が伝わり、信頼関係を築きやすくなります。
ただし、施設ごとの方針や本人の希望に応じて呼び方を調整するなど、柔軟に対応することが大切です。
高齢者の呼び方に迷ったときは、年齢だけで判断せず、相手の経験や個性、ライフスタイルに配慮することが大切です。
活動的で若々しい方には前向きな呼び方を、深みや敬意を伝えたい場合には尊敬を示す表現を使うと、相手に不快感を与えず円滑なコミュニケーションができるようになります。
場面や関係性に応じて適切な呼び方を意識しましょう。
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