夫が亡くなってから3年経ったある年末。訪問介護の利用者さんは、年賀状を1枚だけ書いて夫の仏壇に添えました。
その理由をヘルパーが尋ねてみると……。
お正月といえば年賀状。日ごろのご挨拶や感謝の気持ちを込めて、相手を思いながら一枚一枚書いた思い出はありませんでしょうか?
しかしスマホの普及やはがき代の上昇により、若者を中心に年賀状を送る文化はすたれていきました。高齢者でさえ年賀状を送る方は年々少なくなっています。
そんな中、ある訪問介護の女性利用者さんから渡された買い物メモに「年賀状一枚」とありました。
他の買い物を済ませたあとに年賀状を購入して利用者さんに渡すと、すらすらと何か書き始め、その年賀状をお仏壇に供えました。
いったいどうしたんだろうと思い聞いてみると、3年前に亡くなったご主人に宛てた年賀状とのこと。
「年賀状の文化が少しずつ消えていくと思ったら、この人に出したくなってね」と……。
生前、ご主人は年賀状の習慣を大切にしていたそうです。ご主人は学生時代から友達が多く、年賀状は亡くなる年まで毎年欠かさず手書きで出していたんだとか。
「毎年ホントに大変そうだったけど、嬉しそうでもあったわね」と利用者さんはニコッと笑いました。
ご主人が亡くなってからは多くの方々に喪中はがきを出さねばならず、とても骨が折れたそうですが、ようやくすべての方に伝えることができたようです。
「皆さんにちゃんと連絡しましたよ。安心してくださいね」と遺影に向かって報告していました。
ご主人が過去に受け取った年賀状は数百枚。ご主人の思い出がつまった段ボールを引っ張り出し、「それにしても重いわ。いったいどうしたもんかしら」と、笑い出す利用者さんでした。
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