「私はどこも悪くない」と服薬を拒否する利用者さん。少し認知症の症状があります。
ヘルパーは薬を飲んでもらおうとしますが毎回苦戦。しかも別のことでも怒られてしまい……。
「認知症にだけはなりたくない」。自立度の高い高齢者は、皆さんそうおっしゃいます。
認知症になったら、家族の存在や自分の誕生日さえ分からなくなるかもしれず、周りに迷惑をかけて暮らすのは嫌、と思っている方が多いという印象です。
認知症という怖い病に対しては、誰もが不安を抱いてしまいます。しかし、認知症の病状はみんな同じではなくグラデーションです。
自分の誕生日がわからない状態の方もいれば、身の回りのことを自分でできる方もいます。
家族の前ではボーッとしていても、ケアマネさんが来ると急にお茶を淹れるなどキビキビ動く方もいました。認知症の症状は人それぞれなんです。
女学校時代から華道をたしなみ、ついには師範代となった92歳の利用者さんがいます。
ヘルパーが訪問に入ったときにはすでに認知症が進行し、外出すると家がわからなくなってしまう状態でした。
日常動作は自立しているのですが、服薬管理だけは自分でできません。薬に対して拒否があり、「私はどこも悪くない」の一点張り。家族もお手上げ状態でした。
そこで、ヘルパーは安否確認も含めた服薬介助をすることになったのですが、一筋縄ではいきません。
それでも何日か通うと、ようやく信頼関係ができてきました。
あるとき、利用者さんが「あなた姿勢が悪いわ」「お辞儀もなっていない」と言い、ヘルパーの背中をグイッ。
それ以降は、親切心から毎回ヘルパーの背中を押すようになりました。
利用者さんはもう華道ができない状態でしたが、現役の頃は生徒の姿勢に厳しく、よく注意していたそうです。その頃の習慣を忘れていなかったんですね。
日々注意されるうちに私の姿勢もよくなってきたのか、あるとき「もう一人前のお背中です」と言い、利用者さんはにこっと笑いました。
信頼関係を築けたのは嬉しかったものの、相変わらず服薬を拒否する利用者さんでした。
こちらもおすすめ
おすすめ事業所情報
新着記事