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買い物難民の定義とは?高齢者を買い物弱者にする3つの原因

買い物難民の定義とは?高齢者を買い物弱者にする3つの原因買い物難民の定義とは?高齢者を買い物弱者にする3つの原因
はーとん

お店が近くになかったり公共交通機関が整っていなかったり……買い物難民や買い物弱者って呼ばれる人がたくさんいるって知ってるかな?

孫

ボクははじめて聞いた!
でも買い物難民って言葉にいいイメージは浮かばないような……。

高齢者に広がる「買い物難民」 その定義とは

はーとん

買い物難民、買い物弱者……ニュースで聞いた人も多いかもしれないっポ。

孫

どんな人が買い物難民や買い物弱者って呼ばれるんだろう。
定義ってあるのかな。

「買い物難民」とは、地方の過疎化や食料品店の減少、公共交通機関の廃止などにより、気軽に食料品を調達できない人のこと。

2010年前後から、書籍の影響や農林水産省の調査などによってこの問題が話題になり、「買い物弱者」「買い物難民」「買い物困難者」といった言葉がマスコミで取り上げられる機会も増えました。

この「買い物難民」「買い物弱者」「買い物困難者」という言葉の定義について、統一的な見解はありません。各省庁でもいろいろな定義付けがされています。

例えば、以下のような具合です。

「高齢者等を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる方」
(農林水産省ホームページより)

「流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買物が困難な状況に置かれている人々」
(経済産業省 買物弱者等に関する報告書より)

より具体的な定義としては、農林水産省の政策研究所による調査が参考になります。
この調査での買い物難民(食料品アクセス困難人口)の定義は以下のようなものです。

食料品アクセス困難人口とは、店舗まで500m以上かつ自動車利用困難な65歳以上高齢者を指します。店舗は、食肉、鮮魚、野菜・果実小売業、百貨店、総合スーパー、食料品スーパー、コンビニエンスストアが含まれます。

(引用:農林水産政策研究所 食料品アクセスマップ)

同研究所によれば、この定義に当てはまる買い物難民は2015年時点で全国に824万6千人。高齢者全体に占める割合は24.6%と高く、およそ4人に1人が買い物難民に当てはまります。

10年前(2005年)の678万4千人と比較すると21.6%の増加です。
高齢者の増加や地域の過疎化、地方の食料供給事情の悪化などによって、将来的には更に増えることが予想されます。

その状況が深刻化しているのは地方だけではありません。東京、名古屋、大阪といった3大都市圏のような都会のエリアにも広がっています。

買い物難民問題への対策としては、官民あげてのきめ細やかなサービス支援や、買い物難民がどこにいて、どのような支援を必要としているかを把握することが必要です。

ところが、人口規模や情報量の多い大都市ではこうした対策が後手に回る傾向にあるため、都市部の買い物難民への支援はなかなか追い付いていない状況があります。

買い物難民が発生してしまう3つの原因

はーとん

なぜ買い物難民が発生してしまうのか、その原因を探るっポ。

孫

これだけたくさんの人が買い物難民になってるんだから原因はあるよね!

買い物難民が発生してしまう原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
主に考えられる原因を3点ほどあげてみましょう。

高齢者の増加

まず第1の原因は、高齢者の増加です。

2020年8月時点の高齢化率、つまり65歳以上人口の割合は28.7%となっています。高齢化率は年々上がり続け、この先も上昇を続ける見通しです。

先ほど参照した農林水産政策研究所のデータでも、2005年から2015年の10年間で買い物難民(65歳以上)は21.6%増、75歳以上では42.1%の大幅増です。

三大都市圏ではこの割合がより顕著で、65歳以上で44.1%増、75歳以上で68.9%増と、かなり大きな伸びを見せています。

高齢者は体力的に移動が難しいだけでなく、2017年の改道路交通法により運転免許の返納が推奨されていることなども影響し、自動車を持たない人が増えています。

高齢者は転居なども難しいので、地域社会や親族などの支援がなければ買い物難民となりやすいのです。

食料品販売事業所の減少

第2の原因は、食料品販売事業所の減少です。

特に郊外型大型スーパーとの競争に勝てなかった中小規模の店舗の減少は顕著で、八百屋さんや魚屋さん、お肉屋さんなどの食料専門店は大きく減少しています(*1、*2)。
地域の食料専門店が頼みの綱だった住民にとっては大きな痛手です。

一方で大型スーパーも競争や採算の面で経営の継続が難しい面があり、地域として採算が合わないと判断するとあっさり撤退してしまう事例も発生しています。
突然、買い物先を失う地域も存在するということです。

支援の遅れ

第3の原因は、支援の遅れです。

2020年に農林水産省食糧産業局がまとめた「食料アクセス問題に関する全国市町村アンケ―ト調査結果」(*3)によれば、買い物難民の対策を必要としている自治体の割合は85%。
そのうち実際に自治体として対策をしていると答えた市町村は全体の68.6%でした。

一方で、「対策をしていない」「対策を検討している」と回答した自治体の割合は31.4.%にのぼります。

特に今後問題になるのは大都市です。
対策を必要としていると回答した大都市は66.7%で、全国の85%と比べると少ないといえます。対策に本腰を入れている地域はまだまだ少ないのが実情でしょう。

人口が多い都市部では住民一人ひとりの状況を把握することが難しいため、早めに手を打たないと一気に買い物難民が増えてしまうおそれがあるでしょう。

高齢者の買い物難民化で起こる3つの問題点

はーとん

買い物難民の問題点は、ただ買い物が不便なだけじゃないっポ。

孫

ボクだったら買い物できないのがいちばんイヤだけどなあ。

高齢者の買い物難民化は、単に生活が困難になるという利便性の問題点だけでなく、QOL(Quality of Life:生活の質)に大きく影響する恐れがある点も懸念されます。

経済産業省による「買物弱者・フードデザート問題等の現状及び今後の対策のあり方に関する調査報告書」(*4)では、高齢者の買い物難民化による問題点をいくつかあげていますが、そのなかの3点にスポットをあてました。

外出頻度の低下による生きがい喪失

1つめは、高齢者の外出頻度の低下による生きがいの喪失です。

高齢者と同居している、あるいは介護をした経験のある方ならよくわかることなのですが、多くの高齢者が日々の買い物を楽しみとしています。

「買い物に行けない」のは単に食料を調達できない、といった問題だけでなく、精神面の健康にも影響します。これは見逃せない点といえるでしょう。

長距離移動による転倒・事故リスク

2つめは、買い物にいくまでの距離が遠くなることによる転倒・事故リスクの増大です。

2020年に起きた交通死亡事故のうち、もっとも多いのが歩行中の事故です(*5)。

東京都内のみのデータですが、歩行中に起きた死亡事故を年代別に見ると70代がダントツで多く52%。60代以上だと実に64%にのぼります。
少子高齢化が進んでいるとはいえ、この割合は非常に大きいといえます。

交通事故以外にも転倒して骨折するなどの危険があるので、買い物できる店舗までの距離が長くなるとそれだけ事故に遭うリスクも高くなるといえるでしょう。

食事の質が落ちることによる低栄養化

3つめは、食品摂取の多様性が低下することによる低栄養化、そしてこれによる医療費や介護費の増加です。

低栄養のリスクは買い物環境だけに限ったものではありませんが、特に一人暮らしの高齢者は食生活に偏りが出やすくなる傾向にあることが問題点です。

食料の調達から食事の準備をするまでの労力は大きく、活動量の少ない高齢者にとって健康的な食生活の維持は高いハードルだといえます。

買い物難民の対策で求められること

はーとん

買い物難民の問題は、自治体を中心にさまざまな対策が行われているっポ。

孫

ちゃんと買い物できる環境が整うといいね!

高齢者の買い物難民化に対する有効な対策方法については、官民や地域社会などの連携、バックアップの有無がカギを握ります。
重要な対策についていくつか指摘しておきましょう。

情報を共有する

先ほどの農林水産省のアンケート調査で、買い物難民問題の対策をしていない理由として多くの自治体があげていたのが、「どのような対策をしていいのかわからない」というものでした。

買い物難民の対策には、地域にどのような高齢者がいて、何を必要としているかを把握する必要があります。
そのうえで、自治体を中心に地域のコミュニティーや企業、NPO、支援機関、医療機関などとその情報を共有することが大切です。

宅配・移動販売車事業のビジネス化

買い物難民解消のためには、宅配サービスや移動販売サービスが広がって利用しやすくなることもひとつの手段です。
しかし民間企業がこの事業を継続させるなら、いかにビジネスとして成立させていくかが重要になります。

すでに一部のスーパーや飲食チェーンなどが参入していますが、当然ビジネスとして成り立たなければサービスの継続はできません。

サービス継続を民間事業者にまかせっきりにすることは難しく、いかに公的なバックアップをできるかが成功のカギとなります。

移動コストを下げるドローン宅配や自動運転車両の開発なども期待されるところですが、交通量の多い都市部では運用が難しく、抜本的な対策となるかは疑問のあるところです。

まだまだ民間企業による取り組みは限定的なので、ここからいかに成功事例をつくれるかが課題といえるでしょう。

移動手段の公的支援

宅配や移動販売にも通ずる部分がありますが、バスやタクシーなどといった移動手段の確保も重要な対策です。

特に車がないと移動すら困難な山間部エリアなどでは、コミュニティーバスやデマンドタクシーの運行は公共インフラと考える必要があるでしょう。
住民の健康状況や生活状況の確認という意味でも役に立ちます。

高齢者への外出機会の提供

高齢者が外出できる手段や目的を提供する、という視点も必要かもしれません。

一部の自治体では高齢者を集めて「買い物ツアー」を定期的に実施しているケースや、出張販売所や青空市場を開き、その場をコミュニティーの場として生かそうとする事例もあります。

単なる支援だけでは自治体や民間事業者に過度な負担がかかり、事業の継続が難しくなることから、いかに「高齢者が外に出ること」をビジネス化できるか、この点がこれからの課題といえるでしょう。

まとめ

高齢者の買い物難民問題は、当事者である高齢者やその家族にとっては実感をともなったものです。しかし、まだまだ社会全体としての取り組みは不足しているといえます。

できるだけ早く地域全体で取り組むべき課題のひとつといえるでしょう。

<参考>
買物弱者対策に関する実態調査結果報告書(総務省行政評価局)
*1 食料品小売店舗数の変動要因-GMSが生鮮品専門店数の変動に及ぼした影響-
*2 農林水産省PDF
*3 「食料品アクセス問題」に関する全国市町村アンケート調査結果(農林水産省)
*4 買物弱者対策支援について(経済産業省)
*5 歩行者の交通事故防止(警視庁)

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著者:かぼじん

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著者:かぼじん

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行政書士、WEBライター
行政書士としてデイサービス施設の開業支援などにもたずさわるかたわら、父親がくも膜下出血で倒れたことをきっかけに、そのリハビリや介護などを経験。現在は、90歳を超えた祖母の見守りなどで、日々いろいろな介護支援のサービス、アプリなどを実践中。また宅地建物取引士資格を持ち、大手不動産メディアなどで不動産にまつわる情報をさまざまな角度から解説している。ライターとしては、スモールビジネスや介護関係、不動産投資の記事を中心に執筆活動中。

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