介護に疲れる理由と限界になる前の対策|セルフチェックシート付き

介護に疲れる理由と限界になる前の対策|セルフチェックシート付き介護に疲れる理由と限界になる前の対策|セルフチェックシート付き

「こんなに大変だとは思わなかった」「いつまで続くのだろう」——介護をしている多くの方が、こうした気持ちを抱えています。介護疲れは、身体的な疲労や精神的なストレス、経済的な不安が重なり合い、気づかないうちに蓄積されていきます。
介護疲れを放置したまま無理を続けると、介護うつや共倒れといった深刻なリスクにつながりかねません。

この記事では、介護に疲れる理由と限界になる前に知っておきたい対処法を解説します。これから介護を始める方の備えとして、また今まさに疲れを感じている方もぜひお役立てください。

「介護が負担」と感じる介護経験者は8割以上

高齢化が進み、ご自宅で介護をするご家庭が増えています。在宅介護では、介護に費やす時間が長くなるほど肉体的・精神的な負担が大きくなり、深刻な介護疲れを起こしてしまう方も少なくありません。

介護経験のある方に「介護を負担に感じるか」と質問した、株式会社プラネットの調査結果が参考になります。

  介護経験1人 介護経験2人以上
とても負担に感じる 35.8% 49.3%
やや負担に感じる 45.2% 37.4%
あまり負担に感じない 16.0% 10.3%
まったく負担に感じない 2.9% 3.0%

株式会社プラネット「Vol.191 高齢者介護に関する意識調査」

「とても負担」と「やや負担」を合わせると、介護経験のある8割以上の人が介護を負担に感じているという結果でした。

介護疲れはなぜ起きる?介護に疲れる4つの理由

介護疲れを感じてしまう理由は、主に4つあります。

・肉体的な負担
・精神的な負担
・時間的な負担
・経済的な負担

家族が介護に疲れる原因について、それぞれ見ていきましょう。

肉体的な負担

介護では介護者が身体を動かす場面が多くあり、肉体的な負担が少なくありません。
以下のような介助が、肉体的な負担になる可能性があります。

  • 体位変換
  • 移動介助
  • 入浴介助
  • 排泄介助
  • 衣服の着脱の補助

など

たとえば入浴介助には、衣服の着脱を手伝い、体を洗い、浴槽まで移動の介助をするといった、多くの動きが盛り込まれています。さらに、滑りやすく暑いなかで中腰の姿勢を保たなければならないなど、肉体的に大きな負担です。

ベッド上でのオムツ交換や体位変換、ベッドから車椅子などに体を移す移乗介助も、環境や方法が適切でないと介護者への負担がとても大きくなります。

トイレ介助も負担が大きい介助のひとつです。狭いトイレで中腰になってズボンを上げ下げし、ご本人を抱きかかえたり体を支えたりもするため、腰や腕などを痛めることが少なくありません。

精神的な負担

介護疲れには精神的な負担が大きく影響します。在宅介護では以下のような状況が精神的負担となり、ストレスの原因になることがあります。

  • 相談相手がいない
  • 介護の終わりが見えない
  • 介護を担う割合が家族で異なる
  • 普段介護をしていない身内が口出ししてくる
  • 物忘れ、徘徊、暴言、失禁など、認知症による症状への対応が負担
  • 介護をしている相手に文句を言われる
  • 介護をしている相手と仲が悪い
  • 自分の時間がとれない
  • 仕事に影響が出る
  • 子育てと両立している
  • ケアマネジャーやヘルパー、事業所と相性が合わない

など

精神的な負担の原因は、その方の置かれた状況によっても異なります。

たとえば親の介護をしているとき、兄弟で介護の比重が異なったり、たまに来ては口だけ出してきたりすると、「自分ばかりが大変な思いをしている」と大きなストレスになってしまいます。

また、認知症の方の介護では、精神的な負担が特に大きくなりがちです。外出したまま迷子になったり、何度も同じ説明をしたりと、家族はさまざまな認知症状に対応しなければなりません。

認知症の症状が重くなると、状況の理解や感情の抑制ができず、家族に罵声を浴びせるようなケースもあります。
以前と変わった姿を見てショックを受ける家族も多く、いつ終わるか分からない介護に参ってしまうのです。

時間的な負担

介護にはそれなりの時間がかかるものです。在宅介護をする家族が介護にどのくらい時間をかけているのか、厚生労働省が調査した結果があります。
以下は、同居での介護に1日のうちどのくらい時間を割いているのかを表した表です。

  ほとんど終日 半日程度 2~3時間 必要なときに手をかす程度
要支援1 3.1% 4.1% 3.2% 65.6%
要支援2 3.7% 1.7% 8.7% 63.7%
要介護1 11.8% 8.9% 12.4% 55.3%
要介護2 17.0% 12.3% 16.4% 45.0%
要介護3 31.9% 21.9% 11.5% 26.0%
要介護4 41.2% 20.0% 9.4% 17.4%
要介護5 63.1% 17.2% 9.1% 2.5%

厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」

要介護度が上がるごとに介護にかかる時間が増えていることが分かります。
「ほとんど終日」と回答した人は、要介護3で3割以上、要介護4で4割以上、要介護5になると6割以上です。

夜間のオムツ交換で睡眠不足になる、仕事との両立が困難になる、気分転換の時間を確保できないなど、介護時間の増加がストレスや疲れの原因になることも少なくありません。

経済的な負担

介護では、要介護度が上がるにつれて必要なお金も増える傾向です。介護サービスや施設入居の費用、おむつ代、介護タクシー代など、介護にかかるお金はさまざまあります。

公益財団法人 生命保険文化センターの調査によると、住宅改修や介護用ベッドの購入などで一時的にかかる費用は、介護保険を利用している人で平均46万円、介護保険を利用していない人は67万8,000円でした。

一時的にかかった費用の平均
要支援1 44.5万円
要支援2 43.5万円
要介護1 29.8万円
要介護2 54.3万円
要介護3 41.9万円
要介護4 52.5万円
要介護5 47.2万円

公益財団法人 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」

また、介護には月々のお金もかかります。介護費用の月額平均は、介護保険を利用している人で平均9万1,000円、介護保険を利用していない人は4万円です。

介護費用の月額平均
要支援1 5.8万円
要支援2 7.0万円
要介護1 5.4万円
要介護2 7.5万円
要介護3 8.5万円
要介護4 12.4万円
要介護5 11.3万円

公益財団法人 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」

介護サービス以外でかかる費用には、おむつ代、防水シーツ、介護食、食事用のエプロンなどがあり、ティッシュの使用量や洗濯回数の増加なども、生活費を押し上げます。
また、施設への入居も、入居費用や月々の居住費などが大きな出費です。

介護が続く限り出費も継続するため、計画的な予算計画が必要になります。

介護疲れが限界になるとリスクが増える

介護疲れが限界になるとリスクが増える

介護の疲れは気付かないうちにたまっていき、放置したままではいずれ限界を迎えてしまいます。
介護疲れが限界に達してしまうと、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

・介護虐待(身体的虐待・介護放棄など)
・介護うつ
・共倒れ
・介護離職

介護虐待(身体的虐待・介護放棄など)

介護で精神的な疲れがたまると、虐待や介護放棄を引き起こす可能性があります。
認知症の親から何度も「食事をくれ」と言われたり、お漏らしを繰り返されたりすると、イライラして虐待につながる行為をしてしまうことが少なからずあるのです。

厚生労働省の資料によると、家族や親族などによる高齢者虐待は2024年で1万7,100件でした。介護の過酷さが件数にもあらわれています。

また、介護が必要な方を放置してしまう介護放棄につながってしまうケースもあります。食事させない、入浴させない、排泄の介助をしないなど、介護を拒否するような行為です。
介護放棄も高齢虐待のひとつで、介護が必要な方の健康に害が出たり、自宅が不衛生になったりするなどの悪影響があります。

介護うつ

介護疲れは介護うつを招く可能性があります。日々の疲弊が蓄積し、相談相手がいなかったりリフレッシュする時間が取れなかったりすると、介護うつのリスクが高まります。

共倒れ

介護者が心身を壊してしまうと、介護を必要とする人の世話ができず、共倒れになる可能性があります。
共倒れには老老介護のイメージがありますが、若い介護者も他人事ではありません。

老老介護での共倒れについて詳しくはこちら

介護離職

総務省の資料によると、介護や看護が原因で離職した人の数は2022年で47万4,000人でした。介護離職は社会的にも大きな問題です。

仕事を辞めると安定した収入がなくなり、いずれ経済的に苦しくなる可能性が高くなります。
また、再び仕事を始めようと思っても、ブランクによって以前より給与が下がったり、希望の仕事に就けなかったりするリスクもあるため、介護離職はおすすめできません。

すぐに退職を決断するのではなく、まずは介護休業制度などを活用してください。詳しくは後述しますが、通算93日まで休業できるなど、仕事と介護を両立させるための支援制度が複数あります。

介護疲れの程度は?セルフチェックシート

「自分ががんばって介護しなければ」「怠けていられない」というがんばり屋でまじめな方ほど、介護疲れを起こしてしまう傾向があります。
当たり前のように介護に取り組み、疲れの自覚がないまま、気づいたときには限界を迎えているケースも少なくありません。

自分が介護に疲れているか判断するためには、以下のチェックリストを活用してください。該当する項目が多いほど、介護に疲れている状態です。

□相談相手や頼れる人が近くにいない
□自己流で介護している
□自分1人だけで介護している
□自分にも病気や障害がある
□介護は他人に任せられない
□介護はきちんとやりたい
□介護を必要とする人への対応が最優先だ
□終わらない介護に不安がある
□自分の時間が取れない
□睡眠時間が短い、睡眠の質が悪い
□介護によってイライラが増えた
□介護以外にも大きな役割がある
□介護サービスを利用していない
□家出や自殺を考えたことがある
□介護のために家事や仕事に影響が出ている

介護を担っているご家族は、知らず知らずのうちに疲れやストレスを溜めがちです。疲れが蓄積されると、体調や精神面に異変が出てくる可能性もあります。

チェックリストで該当する項目が多かった方は、もしかしたら介護疲れの限界が近づいているかもしれません。限界を迎える前に、次で紹介する対策もご確認ください。

また、ご自分が主な介護者でない場合は、メインで介護している方の疲労の程度に気を配り、変化を見逃さないことが大切です。

介護に疲れる前に実践したいこと

介護疲れが進むにつれて、共倒れや虐待などのリスクが高くなります。介護疲れを軽減するためには、以下の方法を検討してみてください。

・介護の悩みを相談する
・介護サービスを活用する
・施設への入居を検討する
・地域の支援サービスを活用する
・介護休業を取得する

ここでは、介護に疲れる前に実践したいことについて解説します。

介護の悩みを相談する

精神的な負担を軽減させるためには、介護の悩みを誰かに相談しましょう。ひとりで抱え込んだままだと心が辛くなってしまいます。

高齢化が進んだ現在では、介護経験のある人は意外と近くにいるものです。親族や知人、近所の人など、誰かに話をするだけで気持ちがスッキリし、自分だけではないと心強く思えるでしょう。また異なる考え方に触れることで視野も広がります。

身近に相談できる人がいない方、的確なアドバイスを受けたい方は、専門の窓口に相談する方法もおすすめです。その方に合った介護サービスを紹介してくれるなど、介護の負担軽減に向けて具体的な方法を提案してくれます。

介護の悩みを相談できる相談窓口は複数あります。

ケアマネジャー

介護をする人にとって、もっとも身近な相談相手です。ケアマネジャーは、介護に関する専門的な知識や技術があり、利用者だけでなく家族支援の視点も持っています。
相談内容をすぐにケアプランに反映することもできるため、スピード感のある対応が可能です。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、地域の高齢者に関するさまざまな相談を受け付ける公的機関です。
「親が退院したものの介護が必要な状態になった」「一人暮らしのおじいさんが認知症かも」などの相談ができ、必要なサービスや機関につないでもらえます。

市区町村の役所窓口

市区町村役場には、介護保険に関して相談できる窓口や、高齢者支援に関連した窓口などがあります。窓口の名称は市区町村により異なります。

社会福祉協議会

社会福祉協議会は、地域全体の福祉に取り組んでいる組織です。介護に関する困りごとや金銭面の相談もできます。

医療機関の担当窓口

医療機関の相談窓口では、退院後の生活や治療について相談できます。地域の支援機関と連携して退院後の体制を整えたり、必要に応じて施設を探したりしてもらえます。

介護サービスを活用する

介護負担を軽減するためには、介護サービスの利用が効果的です。要介護認定を受けると1~3割の負担で介護保険サービスを利用できるため、経済的な負担も最小限です。

在宅介護で利用できる主な介護保険サービスは以下です。

訪問するサービス ・訪問介護
・訪問看護
・訪問入浴介護
・訪問リハビリテーション
通いのサービス ・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
宿泊するサービス ・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護(ショートステイ)
その他のサービス ・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売
・住宅改修

高齢者の自宅に訪問するサービスや、本人が日帰りで施設に通うサービス、宿泊できるサービスなど、その種類はさまざまです。

デイサービスやショートステイには、「介護家族が休息(レスパイト)する」という役割もあり、サービスの利用中はご家族のリフレッシュ時間にできます。

必要に応じて、保険外サービスも活用すると便利です。全額自己負担になりますが、介護タクシーや食事の配達など、保険内ではカバーできないサービスがあります。

介護サービスについて詳しく知りたい方はこちら

施設への入居を検討する

介護の時間や負担が増えた場合は、施設への入居も検討してください。
老人ホームや高齢者住宅には、主に以下の種類があります。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • グループホーム
  • 介護付き有料老人ホーム
  • 住宅型有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅

サービス内容や受け入れ条件などは、施設種類や施設ごとのルールによって異なります。とくに有料老人ホームはサービス内容に大きな違いがあるため、詳細は各施設に確認しましょう。

特別養護老人ホームは比較的安く利用できることから、入居待ちが発生するおそれがあります。入居の検討を始めたら、できるだけ早く申し込みをしておくと安心です。

地域の支援サービスを活用する

各自治体には介護を支援するサービスがあります。支援内容は地域によって異なりますが、多くの自治体が以下のような支援をしています。

  • 介護カフェ(高齢者カフェ・介護サロン・認知症カフェ)の開催
  • 安否確認
  • バス・タクシー代の助成
  • 紙おむつの助成
  • お弁当代の補助

など

介護カフェでは同じ境遇の人が集まるため、介護の悩みを打ち明けやすいでしょう。
安否確認には、コールセンターなどにつながる電話機の貸し出しや、認知症による徘徊時の捜索に使えるGPSの貸し出しなどがあります。

また、おむつ代やバス・タクシー代、お弁当代といった費用面の支援をしている自治体もありますが、詳しい支援内容はお住まいの自治体のホームページなどでご確認ください。

介護休業を取得する

介護と仕事の両立に悩んだときは、介護休業を活用しましょう。介護休業は、家族を介護するために休業できる制度です。

対象となる家族  2週間以上にわたって介護を必要とする以下の家族
配偶者 (事実婚を含む)、父母、祖父母、子、孫、配偶者の父母、兄弟姉妹
対象者 対象となる家族を介護する労働者
※日雇い除く、パート・アルバイトは別途要件あり
利用期間と回数 対象家族1人につき3回まで、通算93日

介護休業の手続きをした対象者には、休業期間中に賃金の67%相当が介護休業給付金として支給されます。

また、以下の制度も活用できます。

介護休暇 対象家族1人につき1年間に5日の休暇を取得できる
短時間勤務等の措置 短時間での勤務、時差出勤、フレックスタイム制度などを利用できる
所定外労働の制限 残業が免除される
時間外労働の制限 時間外労働が1カ月24時間、1年150時間以内に制限される
深夜業の制限 午後10時から午前5時に勤務しない働き方ができる

手続き方法などは勤め先に確認してみましょう。

介護に疲れる前に、一人で抱え込まないことが大切

在宅介護では、身体的・精神的・時間的・経済的な負担が複合的に重なり、知らないうちに疲れが蓄積してしまいます。責任感の強い方ほど限界まで気づきにくいため、セルフチェックシートを活用して自分の状態を定期的に確認することが大切です。

介護疲れを放置すると、介護うつや虐待・共倒れといった深刻なリスクにつながりかねません。
疲れを感じたら、まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、介護サービスや介護休業制度を積極的に活用してください。

介護は長期戦です。ご自身の心身を守ることが、結果として大切な家族を守ることにつながります。
一人で抱え込まず、使える制度やサービスをうまく活用しながら、無理のない介護を続けていきましょう。

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\対象エリアは全国75市区以上!/

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著者:竹野 はる(045 FORTYFIVE所属)

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著者:竹野 はる(045 FORTYFIVE所属)

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介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護福祉士、介護保険認定調査員、認知症介護実践者研修修了、保育士

介護歴15年の福祉ライター・編集者。訪問介護や特定施設など、さまざまな現場で経験を積んだのち、ケアマネジャーとして働きながら介護保険認定調査員としても活動。障がい者就労支援や保育士の経験もあり。必要な方に正しい情報を届けることを意識し、多様な立場への深い理解に基づいて執筆活動を行っている。

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