介護保険は将来の介護に備えて国民が加入するものです。保険という性質上、介護保険料を支払う必要があります。
この記事では、介護保険料の支払いはいつから始まりいつまで続くのか、また支払の方法や滞納時のペナルティなどについて解説します。
介護保険料の支払いは、介護保険制度が創設された2000年から始まったっポ。
介護保険料とは、介護保険制度を支えるために国民が支払う保険料のことです。介護保険制度は高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みで、高齢者の自立支援を理念としています。
介護保険制度の財源のうち、50%は国や都道府県、市町村による公費ですが、残り50%は私たちが支払う介護保険料でまかなわれています。そのため、日本で暮らす人には原則として介護保険の加入が義務付けられているのです。
介護保険料を支払うことで、高齢者になってから少ない費用負担でさまざまな介護サービスを受けられます。
介護保険料の支払いは40歳から始まるっポ。
介護保険は満40歳から加入が義務付けられています。会社員であれば給与から介護保険料が天引きされているため、給与明細に「介護保険料」の項目が増えていることで気付く人も多いでしょう。
介護保険は公的な保険制度なので加入する・しないは選べず、強制的に加入することになります。介護保険法に定められているため、脱退することもできません。
介護保険料の徴収は満40歳に達したときからはじまり、その後は生涯払い続けなければなりません。
その代わり、介護が必要になったときには1~3割の少ない負担でさまざまな介護サービスを利用できます。
なお、少ない自己負担で介護サービスを利用できるのは要介護認定を受けた人です。
要介護認定は日常生活でどの程度の介護が必要なのかを判定するもので、65歳以上の高齢者、もしくは特定疾病のある40歳以上の人が対象となっています。
介護保険料の徴収がはじまるのは満40歳に達したときです。「満40歳に達したとき」とは、40歳の誕生日の前日を指します。
40歳の誕生日の前日に当てはまる月から徴収がはじまるため、たとえば誕生日が7月1日の方であればその前日は6月30日となり、保険料の徴収は6月分からです。
誕生日が7月2日の方はその前日が7月1日となり、7月分からの徴収となります。
誕生日 | 徴収がはじまる月 |
---|---|
7月1日 | 6月 |
7月2日 | 7月 |
このように、誕生月が同じであっても1日生まれの方は前月から納付義務が発生します。
介護保険料を知るためには、第1号被保険者と第2号被保険者の違いも知っておきたいっポ。
介護保険の被保険者は、年齢などに応じて「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の2種類に分けられます。
「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の主な違いは以下の通りです。
第1号被保険者 | ・65歳以上の方 ・保険料の徴収は原則として年金からの天引き ・要介護・要支援に認定されると介護サービスを利用できる |
---|---|
第2号被保険者 | ・40歳から64歳までの医療保険加入者 ・保険料の徴収は原則として給与からの天引き ・介護サービスは利用できない(特定疾病による要介護・要支援認定を除く) |
第1号被保険者となるのは65歳以上の方です。65歳になると介護保険証が発行され、要介護認定を受けて介護や支援が必要な状態であると認められると、少ない費用負担で介護サービスを利用できます。
第2号被保険者となるのは、40歳から64歳までの医療保険加入者です。基本的に介護サービスの利用はできません。利用できるのは、厚生労働省が定める老化に起因する特定疾病により要介護や要支援の認定を受けた方に限られます。
介護保険料の徴収方法については以下で詳しく解説します。
介護保険料はいくらかかるのかな…。
「第1号被保険者」と「第2号被保険者」では、徴収される介護保険料の計算方法も異なります。
第1号被保険者の介護保険料は以下2点に応じて各市区町村が設定するため、一律ではなく人によって異なります。
2024年から2026年度の介護保険料基準額の全国平均は6,225円です。前回の6,014円より211円の増加となりました。
市区町村は3年ごとに介護保険料基準額の見直しを行い、65歳以上の方の介護保険料を決定しています。そのため介護保険料は3年間変わりません。
介護保険料の基準額が市区町村ごとに異なる理由は、必要な介護保険サービスの総費用や高齢者の人数は自治体ごとに違うためです。
介護保険料基準額は、もっとも安い地域で月額3,374円(東京都小笠原村)、もっとも高い地域で9,249円(大阪府大阪市)となっています。
また、以下は主要都市による違いの一例です。
介護保険料基準額(月額) | 収入等に応じた段階区分 | |
---|---|---|
北海道札幌市 | 5,773円 | 13段階 |
東京都千代田区 | 5,600円 | 18段階 |
愛知県名古屋市 | 6,950円 | 18段階 |
福岡県福岡市 | 6,225円 | 15段階 |
たとえば、東京都千代田区に住む「合計所得金額が120万円以上210万円未満の課税者」は、18段階あるうちの第7段階に該当し、介護保険料は月あたり7,275円です。
第1段階であれば1,592円、第18段階なら19,600円と、同じ区であっても大きな差があることがわかります。
介護保険料は人によって異なるため、詳しい金額を知りたい方は、お住まいの市区町村に確認してみてください。
第2号被保険者の介護保険料は、加入する医療保険により算定方法が異なります。
大きくわけると「職場の健康保険に加入している方」と「国民健康保険に加入している方」の2パターンです。
勤務先で全国健康保険協会などの健康保険に加入している方の介護保険料は、下記の式で算出されます。
介護保険料率は加入する医療保険によって異なります。たとえば全国健康保険協会(協会けんぽ)の介護保険料率は、2024年3月分より1.60%です。
なお、介護保険料は医療保険料と同じように半分は勤め先の会社が負担します。
自営業などで国民健康保険に加入している方の介護保険料は、前年の所得や世帯の第2号被保険者数などに応じて算出されます。
詳しい計算方法や介護保険料率は市区町村により異なるので、お住いの地域への確認が必要です。
なお、介護保険料は医療保険と合わせて国民健康保険料として納めます。国民健康保険に加入している方の介護保険料は半分が公費で負担されます。
第1号被保険者と第2号被保険者、それぞれの介護保険料の納付について解説するっポ。
65歳以上の方と40~64歳の方では介護保険料の支払い方法が異なります。それぞれの納付について詳しくみていきましょう。
65歳以上の方の納付方法は、年金から介護保険料が天引きされる特別徴収です。特別徴収の対象となるのは、老齢年金、退職年金、障害年金、遺族年金を年額18万円(月額1万5,000円)以上受給している方です。
特別徴収の手続きは不要で、年6回の年金受給のタイミングで天引きされます。
口座振替・納付書払いで納める普通徴収という納付方法もありますが、特別徴収か普通徴収かを自身で選ぶことはできません。
普通徴収の対象となる方は以下の通りです。
基本的には特別徴収で、一時的に普通徴収の対象となる方は以下の通りです。
など
納付書払いの場合は、市区町村から送付される納付書で、銀行や郵便局、コンビニエンスストア、役所の窓口などで支払います。手続きをすれば口座振替も可能です。
第2号被保険者の介護保険料は、加入している医療保険とあわせて徴収されます。医療保険によって納付方法は異なりますが、職場の健康保険に加入している場合は給与から天引きされます。
国民健康保険に加入している方は、市区町村に口座振替か納付書で納付します。納付書で支払う場合は、払い忘れによる滞納に注意が必要です。
国民健康保険 | 世帯ごとに算出された金額が徴収される |
---|---|
職場の健康保険 | 加入する健康保険ごとの算定方法に基づいて徴収される |
どんな人が介護保険料納付の対象外になるのかな?
40歳以上の国民には介護保険の加入が義務付けられていますが、以下のような方は支払わなくていいとされています。
ここでは、介護保険料を払わなくていい人について解説します。
40〜64歳で医療保険に加入していない生活保護の受給者は、介護保険の被保険者から外れます。そのため介護保険料の支払いも不要です。
65歳以上の方は、生活保護を受給していても介護保険の被保険者となります。
介護保険料の支払いは必要ですが、生活保護費に上乗せして支給されるため実質的な負担はありません。また、介護サービスの利用では生活保護費の介護扶助費ですべてまかなわれます。
医療保険に加入している40〜64歳の被扶養者は、介護保険料を支払う必要がありません。扶養者が加入する健康保険団体が負担するためです。
ただし、被扶養者であっても65歳以上になると年金から介護保険料が天引きされます。
ちなみに、被扶養者とは親や配偶者の扶養に入っている人のことです。例えば専業主婦、病気などで働けない人、収入のない人などが該当します。
市区町村から特別な事情により生活の維持が困難だと判断された方は、介護保険料の支払いが減免、または軽減される可能性があります。
介護保険料が減免および軽減となる要件としては、以下のようなものが挙げられます。
介護保険料の減免や軽減には申請が必要です。上記のような事情で介護保険料の支払いが難しい方は、市区町村の窓口に相談しましょう。
介護保険料の納付は義務だけど、もし滞納したらどうなるのかな?
介護保険料の支払いを滞納すると、未納期間に応じて措置が講じられます。介護保険ではサービス利用時の費用負担が1~3割(所得に応じる)に軽減されますが、滞納するとペナルティがあります。
介護保険料を滞納するとどうなるか詳しくみていきましょう。
介護保険料を納付期限までに支払わないと、督促状送付に関する手数料や延滞金が発生します。
延滞金は、納付期限の翌日から納付された日まで1日ごとに加算されるため、未納期間が長くなるほど延滞金も増えます。
介護サービスを利用したときに支払う料金は、通常1~3割の自己負担分のみです。しかし1年間の未納があると、いったん全額を支払い、あとから7~9割の払い戻しを受ける「償還払い」という方法がとられます。
たとえば、介護サービスでかかった費用が10万円で自己負担が1割だとすると、支払う金額は通常1万円です。
しかし1年以上滞納すると、いったん10万円を全額支払う必要があります。
その後9万円の払い戻しは受けられますが、一時的とはいえ一度に支払う金額が増えてしまいます。
介護保険サービスを利用した場合は、1年以上の未納のケースと同じく利用した介護サービス費用の全額を支払います。
ただし未納が1年6か月以上になると、払い戻しを申請しても全部または一部が差し止めになります。滞納分が納付されるまでは払い戻しを受けられません。
その後も滞納が続けば、差し止められた介護保険給付額が滞納している介護保険料に充てられることもあります。
滞納が2年以上になると、時効となり介護保険料を支払うことができません。
介護サービスを利用する際は、未納期間に応じて自己負担割合が引き上げられます。自己負担額が通常で1・2割の人なら3割、3割の人なら4割です。
また、高額介護サービス費や高額医療合算介護サービス費の支給がされず、施設入居での食費と居住費を軽減できる特定入所者介護サービス費も支給対象ではなくなります。
これらを防ぐためには、時効前に分割して納付すると誓約する必要があります。
介護保険料を正しく納付すれば、介護保険サービスを1~3割で利用できるっポ。
介護保険サービスを利用するには、まずはお住いの市区町村で要介護認定の申請が必要です。その後は調査員による認定調査や判定のための審査が行われ、要支援1・2、要介護1~5までの7段階もしくは非該当と認定されます。
要介護度が決定したら、ケアマネジャーと一緒に作成したケアプランに基づいてサービスの利用開始です。
介護保険サービスの種類を大きくわけると以下になります。
ヘルパーや看護師などが自宅を訪問してくれるサービスです。必要な介護や看護などを受けながら、自宅で生活を送ることができます。
具体的なサービスは下記の通りです。
日帰りで施設に通い、介護やリハビリテーションなどを受けるサービスです。自宅にこもりがちな高齢者の孤立感の解消、心身機能の維持、家族の介護負担の軽減などを目的としています。
具体的なサービスは下記の2種類です。
短期間施設に宿泊し、介護や生活支援などを受けるサービスです。家族の外泊時や介護負担の軽減などを目的に、連続して30日まで利用できます。
短期間宿泊して利用できるサービスはショートステイと呼ばれ、以下の2種類があります。
必要に応じて通所・訪問・泊りを組み合わせて利用するサービスです。看護小規模多機能型居宅介護は看護のサービスも追加されます。
施設に入居して、生活に必要な支援や介護、リハビリテーションなどを受けるサービスです。介護老人保健施設を除き、基本的には終身で利用できます。
具体的なサービス内容は以下の通りです。
福祉用具をレンタル・購入できるサービスや介護が必要な方の状態に合わせて自宅を改修できるサービスがあります。適切に利用することで、自立した在宅生活がしやすくなります。
福祉用具やリフォームのサービスは下記の通りです。
介護保険制度は高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みです。介護保険は満40歳になると加入が義務付けられますが、介護保険料や支払い方法は年齢や加入する医療保険の種類によって異なります。
特に40代、50代の方は介護保険料の支払いが無駄に感じるかもしれません。しかし現在、高齢者のうち18.9%が要介護や要支援の認定を受け、介護サービスを利用しながら生活を送っています。
つまり、高齢になると5~6人に1人は介護や支援が必要な状態になるということです。年齢が上がればその割合はさらに高まります。
介護は自分には関係ないと思うかもしれませんが、決して他人ごとではありません。
介護保険料を支払うことで、介護が必要になったときに少ない費用負担でさまざまな介護サービスを受けられます。支払いを怠ると、介護保険サービスの利用が必要になったときに経済的負担が大きくなるため注意が必要です。
介護保険は将来に備えるための保険です。将来介護が必要になったときに大きな支えとなり、安心につながるでしょう。
<参考資料>
厚生労働省「第9期計画期間における介護保険の第1号保険料について」
全国健康保険協会 協会けんぽ「協会けんぽの介護保険料率について」
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