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高齢者・認知症の人に言ってはいけない言葉とは?介護でNGな声掛け・ダメな接し方

高齢者・認知症の人に言ってはいけない言葉とは?介護でNGな声掛け・ダメな接し方高齢者・認知症の人に言ってはいけない言葉とは?介護でNGな声掛け・ダメな接し方
はーとん

“高齢者や認知症の方に言ってはいけない言葉”や“介護で使ってはいけない言葉”について解説するっポ。
良好な関係を築くための参考にしてね!

介護するうえで大切なこと――そのひとつが要介護者と介護者の信頼関係ではないでしょうか。信頼関係を築くために必要なのがコミュニケーション、つまり声掛けです。
しかし、ただ声を掛ければ良いわけではありません。高齢者や認知症の方に対して言ってはいけない言葉や、間違った接し方があるのです。
高齢者との信頼関係を築くために必要な正しい声掛けとは、どのようなものなのでしょうか。

介護では声掛け・コミュニケーションが大事!

はーとん

普段の何げない会話や挨拶に嬉しさを感じる高齢者も多いみたい。

声掛けとは、介護をするうえでもっとも重要なコミュニケーション技法です。介助前や介助中はもちろん、要介護者を気遣うときにも行います。

2013年、跡見学園女子大学が介護施設を利用する要支援・要介護者を対象に、「介護施設利用者と職員間のコミュニケーション」についてアンケート調査を実施しました。

その中の「介護施設を利用することで『嬉しかった』と感じたこと」の質問に対し、もっとも多くの票を集めたのが「介護職員や知り合いとの日常会話」。
特別な会話でなくとも、普段の会話や挨拶、話しかけてくれるという行為そのものに嬉しさを感じるとの結果でした。
このアンケート結果からも、要介護者が介護者からの声掛けを求めていることがわかります。

そうはいっても、声を掛ければ良いというわけではありません。介護には、正しい声の掛け方があります。
その証拠に、介護福祉士国家試験においても、正しい声掛け方法を問う「コミュニケーション技術」が試験科目になっているのです。

良い声掛けは要介護者と介護者の信頼関係を築くだけでなく、安全かつスムーズに介護を行うためにも必要となります。
逆に声掛けが悪いと、お互いの関係性にひびが入ったり介護に支障をきたしたりする恐れがあるため、声掛けの内容には十分注意しなくてはなりません。

高齢者・認知症の方に言ってはいけない言葉とは?NGな声掛け事例

はーとん

介護には正しい声掛けがある一方で、使ってはいけない言葉もあるっポ。

介護には、高齢者や認知症の方に対して言ってはいけない言葉があります。
まずは、悪い声掛けの例を見ていきましょう。

一般的な高齢者の場合

まずは高齢者全般で注意したい言葉です。

「〇〇してあげる」

介護をしていると、要介護者に対し「私がやってあげている」という感覚をもつ人もいるでしょう。
しかし、上から目線で「おむつを替えてあげる」、「お風呂に入れてあげる」と要介護者に伝えることで、相手の自尊心を傷つける恐れがあります。
相手の気持ちを尊重した声掛けを心がけましょう。

「忙しいのに」

たとえば、要介護者のトイレが間に合わず着替えが必要になったときや、食事をこぼしてしまい掃除しなくてはならないときなど、「忙しいのに」と思うこともあるでしょう。
しかし、それを口に出すと要介護者を悲しませてしまうのではないでしょうか。

要介護者本人も「申し訳ない」、「情けない」と思っているかもしれません。相手の気持ちに寄り添った、やさしい声掛けが求められます。

「ちょっと待ってて」「あとでね」

「ちょっと待ってて」や「あとでね」は、忙しい日々の中で介護をしていると、どうしても言ってしまいがちな言葉です。
ですが言われた側の高齢者は、「ちょっと」がどのくらいの時間なのかわかりません。

待ってもらいたいときは、「〇分待ってて」「今日は無理だから、明日でもいい?」など、明確な返答をしましょう。

「おむつを替えよう」

プライバシーを無視した声掛けは、要介護者の尊厳を傷つけます。
たとえば、周りに人がいる状態で「おむつを替えましょう」や「うんち出た?」などの声掛けは、要介護者に対する配慮が足りません。

自分が言われたくないことは言わない、これが声掛けの鉄則です。

「早くして」

高齢者の中には、身体機能の低下により思うように体を動かせない人もいます。そのため、高齢者に対し、「早くして」と声を掛けてしまうこともあるかもしれません。

しかし、高齢者の行動を急かすと、転倒や転落といった事故が起こる恐れがあります。高齢者が自分のペースで生活できるような声掛けを意識することが大切です。

小さい声・聞き取りにくい声

高齢者には、耳が遠い人も珍しくありません。そのため、小さい声やボソボソとした話し方では聞き取れない人もいます。

高齢者と話をするときは、ゆっくりとした口調とやや大きめの声を意識することが必要です。それでも聞こえない場合は、耳元ではっきり話すようにしましょう。

認知症の高齢者の場合

次は、認知症のある高齢者の場合で特に注意したい言葉です。

「〇〇しないで」

高齢者に対し、「立たないで」、「動かないで」、「そんなことしないで」と声を掛けてはいませんか。
高齢者本人の安全を考え、つい口に出してしまう言葉かもしれません。

しかし、これらの言葉は「スピーチロック」に該当します。スピーチロックとは、高齢者の行動を制限したり、叱責したりするような声掛けのことです。

スピーチロックは、高齢者に精神的苦痛を与えたり、トラウマを残したりする可能性があたるため、十分な注意が必要です。

「あーんして」

認知症を患う要介護者の中には、着替えや食事、排泄などの基本動作がわからなくなってしまう人もいます。
そのため、介護者は相手に伝わりやすいよう、「おてて、万歳して。ばんざーい」や「お口、あーんして」といった声掛けをしがちです。

しかし、相手は赤ちゃんではありません。高齢者の自尊心を傷つけないよう、赤ちゃん言葉は使わないようにしましょう。

「それ、この前も聞いた」「同じこと何回も言わないで」

高齢者の中には、同じことを何度も言う人も少なくありません。その理由は、加齢に伴う物忘れであったり、認知症の症状であったりとさまざまです。

介護者は「また同じ話をしている」と感じるかもしれませんが、それを指摘することで高齢者を不安にさせてしまう可能性があります。
高齢者を傷つけないような配慮が大切です。

「〇〇ちゃん」

これは介護施設に限った話になりますが、利用者との距離感を間違わないよう注意しましょう。

たとえば、認知症で自分自身のことを「花子ちゃん」と呼ぶ利用者がいるとします。それを受けて、介護者までもがその利用者のことを「花子ちゃん」と呼ぶようなケースです。

自分の親が子どもや孫世代の人から「ちゃん付け」で呼ばれていると知ったら、どう感じるのか。要介護者本人はもちろん、その家族への配慮も忘れてはなりません。

高齢者にやってはいけない!介護でダメな接し方

はーとん

いくら言葉に気を付けても接し方が間違ってたら台無しだっポ!

介護には、言葉だけでなく、要介護者に対してやってはいけない態度や動作などもあります。
ここからは、介護中にやってはいけない接し方を見ていきましょう。

イライラとした態度で接する

忙しいときやプライベートで嫌なことがあったときなど、自分に余裕がないとイライラしてしまうこともあります。
しかし、要介護者にはまったく関係のないことです。

感情が顔や態度に出ると、要介護者に余計な気を遣わせてしまいます。介護をするときは、笑顔で要介護者に接することが大切です。

高齢者を見下ろすように話す

要介護者の中には、背の低い人や車椅子の人も少なくありません。そのため、会話をする際に介護者が立ったままでいると、どうしても要介護者を見下ろすようなかたちになってしまいます。

介護者が要介護者の話を聞くときは、目線を合わせるのが基本です。会話の際は中腰になったり、膝を床についたりして、要介護者を見下ろさないで済むよう工夫しましょう。

馴れ馴れしい態度

介護をしていると、距離感を見誤ってしまうケースも珍しくないでしょう。特に、介護施設の場合は、毎日一緒にいるうちに家族のような気持ちになることもあります。

しかし、介護職員は家族ではないので馴れ馴れしい態度は厳禁です。高齢者を目上の人として敬い、接することを忘れてはなりません。

無理やり介助をする

認知症の要介護者には、介護されることを拒否する人もいます。特に、入浴を嫌う要介護者は多く、「入りたくない!」と暴れてしまうことも。
しかし、無理やり入浴させようとすれば、トラウマになったり怪我をしたりする恐れがあります。

時間を置いて声を掛ける、または声掛けの内容を工夫しましょう。介護施設の場合は、介護者を変えて入浴を促す方法もおすすめです。

無表情で接する

忙しい中で介護をしていると、流れ作業のように介護をしてしまうことがあります。なかには、無表情になったり、声掛けをしなかったりする人もいるようです。

要介護者は、介護者に対して申し訳ないと感じている人も多いため、介護者が無表情だと不安になります。介助をするときは、目を見てできるだけ笑顔で接するようにしましょう。

無視をする

何度もトイレに行きたいと訴える人、何度も同じことを言う人の介護は、正直言って大変です。そのため、もしかしたら無視をしてしまう介護者もいるかもしれません。

しかし、介護者が無視をすれば、要介護者の不安をあおり悪循環です。無視をすることは要介護者の気持ちを傷つける行為でもあるので、どんなに忙しくても相手の気持ちに寄り添う必要があります。

食事、入浴、着替え、排泄…介護での正しい声掛けとは

はーとん

シチュエーション別に正しい介護の声掛けを紹介するっポ。

では、介護ではどのような声掛けが正しいのでしょうか。
シチュエーション別に解説します。

食事

食事介助は、ただ食事を食べさせれば良いというわけではありません。
一方的に「食べてください」と食事を強要するような声掛けではなく、「食べてみたい」と思わせるような声掛けが必要です。

たとえば、小さく刻んだ食事やペースト食しか食べられない要介護者には、食事のメニューはもちろん、調理工程まで伝えると食欲がわきます。
できるだけ楽しい食事の時間を提供できるよう、声掛けを工夫しましょう。

入浴

入浴介助は、相手の羞恥心に心を寄せた声掛けをします。
介護者にとっては当たり前の光景であっても、要介護者にとっては「自分だけ裸になる」という状況は恥ずかしいものです。

「〇〇さんって、ナイスバディですね」といった体についての声掛けは、たとえ誉め言葉であってもしないようにしましょう。

また、入浴を拒否する要介護者には、「お風呂に入らなければ臭いますよ」といったマイナスの声掛けではなく、「体を温めると、足の痛みが取れるかもしれませんよ」や「お風呂に入ってさっぱりしましょう」といったプラスの声掛けを心がけます。

着替え

着替え介助の際は、要介護者に安心してもらえるよう、次に何をするかその都度声掛けするのがおすすめです。

特に、認知症の高齢者には、なぜ服を脱ぐのかが理解できない人もいます。そのため、急に着替えさせようとすると「なんで裸にするんだ!」と暴れる人もいるでしょう。

その場合は、「寝る時間なのでパジャマに着替えましょう」というような着替える理由を伝えます。それから、「腕を上げてください」や「ボタンを留めてください」と、ひとつずつ伝えれば、納得して着替えてもらえるでしょう。

排泄

排泄介助は、もっとも要介護者の尊厳に関わる介助といっても過言ではありません。そのため、介護者は相手の羞恥心や情けなさ、悔しさなどを配慮した声掛けをすることが必要です。

おむつ交換の声掛けひとつをとっても、「おむつ替えますね」と言われるのと、「下着を交換しましょう」と言われるのでは、要介護者の受け止め方が違います。
周りの人に聞こえないように配慮することも大事です。

要介護者の気持ちに寄り添った声掛けを!

高齢者の中には、「自分は必要のない人間だ」と感じている人も少なくありません。周りの人が「いつも気にかけているよ」という気持ちを伝えることで、高齢者の自尊心を高められます。

特別な声掛けは必要ありません。
「今日は顔色が良いですね」や「よく眠れましたか」といった相手を気遣う言葉を掛けるだけでよいのです。
高齢者に前向きになってもらえるよう、積極的に声を掛けましょう。

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著者:柴田 まみ

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著者:柴田 まみ

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介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、社会福祉主事任用資格保有
特別養護老人ホームのユニットリーダーや、デイサービスの生活相談員に従事し高齢者福祉に携わる。特にデイサービスでは、介護をするご家族とのやり取りから在宅介護の難しさを実感。現場での経験を活かし、現在、介護関連の記事を執筆中。できるだけわかりやすい言葉を使って、介護の知識がない人でも理解しやすい文章を心がけている。座右の銘は、継続は力なり!

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