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車椅子の妻と夫婦2人で国内旅行はできますか?【主任ケアマネが回答】

車椅子の妻と夫婦2人で国内旅行はできますか?【主任ケアマネが回答】車椅子の妻と夫婦2人で国内旅行はできますか?【主任ケアマネが回答】
はーとん

実際にあったお悩みに対して、主任ケアマネがアドバイスした事例を紹介するよ。今回は「車椅子の妻を連れて2人で国内旅行に行きたい」というたけおさん(68歳)の事例だっポ。問題なく旅行に行けたのかな?

母

すてきな旦那さまよね! 奥さまが病気になってからのはじめての旅行だったそうよ。ホテルや立ち寄る場所の事前確認と準備をしっかりしたたことで、楽しく過ごせたらしいわ。

相談:付き添いなしで車椅子の妻と旅行は可能ですか?

<たけおさん(仮名)68歳>
64歳の妻と二人暮らしで子どもはいない。定年退職後は、夫婦で趣味の登山や旅行を楽しんでいたが、2年前に妻が脳梗塞を発症。言葉が上手く出ない失語症と右半身に麻痺が残り、現在要介護2の介護認定を受けている。

妻は数メートルであれば伝い歩きができ、椅子から車椅子への移乗も自力で可能な状態。発語がしにくいがゆっくりであれば話すことができるため、意思の疎通は可能である。
週3回のデイサービスを利用しながら、家事や介護は主に夫が担っている。要介護状態になり2年を迎えようとしているので、次のお正月には自分が車を運転して、2人の趣味であった旅行に行ってみようと思っているが、気をつけることはあるか。

ライター寺岡純子(主任介護支援専門員)
寺岡純子さん(主任介護支援専門員/看護師)からのアドバイス
普段のたけおさんは、奥さまの介護を1人で担っているものの、特に問題もなく毎日を過ごしています。そのため、車椅子での旅行も可能だと感じているようでした。
しかし、旅行となると日常生活とは状況が違います。最近ではバリアフリーの場所が増えていますが、行くところすべてがバリアフリーになっているわけではないので注意が必要です。
そのため、事前にチェックしておくポイントや、工程の計画の立て方をアドバイスしました。

思うように身体が動かなくても、諦めずにチャレンジ

脳梗塞とは、脳の血管が詰まって脳の細胞がダメージを受ける病気です。脳梗塞を起こした場所によって、麻痺などの後遺症が現れます。麻痺があると寝たきりにつながることも多く、高齢者が要介護状態になる原因では第2位となっているものです。

自分の思うように体が動かなくなることで、日常生活にさまざまな制限ができます。そのため、いままでできていたことができなくなり、意欲の低下につながることが多くなります。
また、日常生活で家族の介助を受ける場面が多くなると、それまでの趣味や好きだったことなどは、家族に遠慮をしてやらなくなってしまうケースもあるのです。

たけおさんの奥さまも、毎日自分のために慣れない介護をしてくれる夫の姿を見て、申し訳ないという思いでいっぱいだったと言います。「病気になってしまったのだから、自分のやりたいことは諦めるしかない」と、夫婦ともに思っていたと話されていました。

この話を聞いて、病気や介護をきっかけにやりたいことを諦めるのは良くないとアドバイスしました。
まだまだこれから先の長い人生です。諦めることが癖づいてしまう前にチャレンジを習慣にする。このほうが良いと思います。

そのあと、たけおさんは何かチャレンジしてみようと考えたそうです。それがお正月に旅行に行くというものでした。なぜお正月に行くのかと聞くと、妻が病気になる前は毎年お正月には海外旅行に行っていたとのこと。
そのため、家で過ごすお正月には違和感があるようでした。いずれは海外に行くことを目標にしながら、まずは毎年恒例であったお正月旅行をして、国内のどこかで過ごそうと考えられたそうです。

車椅子旅行で気をつけるべきポイント

車椅子で温泉旅行をする夫婦

車椅子であっても旅行は可能です。ただし気をつけるべきこともあるので、事前のチェックが必要です。
車椅子を使用して旅行を計画する際には、必ず事前に訪れる場所の状況を確認してから計画を立てると良いと思います。
チェックするポイントは次のようなところです。

交通手段

自家用車で行く旅行なら、荷物が多くなっても安心です。しかし、運転に疲れたときに交代してくれる人がいない場合には、あまり遠出しないようにしましょう。行きは良くても帰りに疲労が重なり、運転に支障を来すことも考えられます。

電車や公共交通機関を利用する旅行なら、駅員さんに列車の乗降の手伝いをお願いするようにしましょう。乗車駅に事前に連絡しておくと対応がスムーズです。また、乗降する駅が無人駅であっても、その最寄り駅に連絡すれば対応してもらえるケースもあります。

新幹線や在来線の特急には、車椅子対応の座席を設けている列車があります。座席に移乗せずに乗車したい場合には活用するようにしましょう。

トイレ

トイレ休憩の場所はあらかじめ決めておくようにします。行き当たりばったりだと、利用できるトイレが見つからない事態も起こりえます。
車椅子のままトイレ内に入りたいときやトイレ内で介助が必要な場合は、多目的トイレの場所を確認しておく必要もあります。通常のトイレでは介助者も同姓でないと付き添えないため、見守りや介助を必要とするときには注意が必要です。

お風呂

温泉地に旅行に行くこともあるかもしれません。温泉地や旅館などではバリアフリー化されていないことも多いので、段差や手すりの有無などについて状況を確認しておきましょう。
温泉の浴室内は滑りやすいこともあり、必ず介助や見守りをする必要があります。そのため貸し切り風呂や部屋のお風呂に一緒に入るのが望ましいです。

ホテルであれば、車椅子対応のバリアフリールームのあるところもあります。バリアフリールームは広い浴室とトイレの構造になっていることが多いため、車椅子でも過ごしやすいでしょう。

お風呂は危険が伴いますし、勝手が違うと介助がしにくいこともあります。決して無理をせず、状況によっては入浴を諦める選択も必要でしょう。

観光場所の状況

観光で訪れる場所の駐車場の位置や道路状況も確認しておくようにしましょう。観光地は道が舗装されていなかったり、幅が狭かったり、坂になっていたりなど、車椅子で移動するには不向きな場所もあります。
ホームページをチェックする、観光センターに直接問い合わせるなどして、事前に確認しておきましょう。

また、たけおさんの旅行計画はお正月のため、休業している施設やお店もあると考えられました。行きたい場所の休業日と営業時間の確認も必要になります。

おむつなどのごみ

紙おむつなどを使用している場合は、ホテルや旅館でおむつを捨てても良いかを事前に確認しておきましょう。場合によっては自宅に持ち帰る必要がありますので、密封できるおむつの処理袋は必ず持参してください。

たけおさんが希望する車でのお正月旅行では、道路が渋滞に巻き込まれるリスクが高いため、道中のトイレ休憩をたくさん取り、時間に余裕を持った計画にするようにアドバイスしました。

「ヘルパーも旅行に同行」は可能?

家族だけで旅行に行くのは不安という場合、ヘルパーさんに同行してもらうことはできるのでしょうか。ヘルパーの旅行への同行は介護保険の適応外となります。
しかし、旅行への付き添いに必要な介護技術と旅行の知識を持ったトラベルヘルパーという介護旅行の専門家がいます。そのほか、介護タクシーを利用することで、介護の資格を持ったスタッフに移動や乗降時の介助をお任せするという方法もあります。

介護旅行専門会社に依頼するという方法も

これまで説明したような注意点をチェックして、自分で車椅子旅行を計画しようと思うとなかなか大変です。そのような場合は、介護旅行を扱っている旅行会社に依頼すると、旅行の計画から付き添いまでをサポートしてくれます。
旅行だけでなくお墓参りや帰省、結婚式などにも対応してくれるため、行動範囲を拡大できます。やりたいことを諦めないために上手に活用するのも良いでしょう。

まとめ

たけおさん夫婦の事例では、介護が必要な状態でも車椅子であっても、「工夫次第でやりたいことを諦めなくても良い」と感じてもらえる結果となりました。
たけおさんには事前に相談していただいたために、前もってチェックすべきことのアドバイスができました。アドバイスに従った旅行計画を立てられたため、トラブルもなく元気だった頃のようなお正月旅行を楽しめたようです。この相談以降も、夫婦そろって前向きな毎日を楽しめているとのこと。
今年のチャレンジに、旅行という選択肢も入れてみてはいかがでしょうか。

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著者:寺岡 純子

著者の画像

著者:寺岡 純子

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合同会社カサージュ代表
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、終活カウンセラー1級
8年間の臨床看護を経て、介護保険の開始に伴い介護業界へ転向。全国展開する大手介護事業者で部長職としてさまざまな介護サービスの運営・人材育成を経験する。医療・介護の幅広い知識と経験を多くの介護事業者に届けたいとの思いから独立。現場・事業者・利用者の視点に立ち、介護に特化した研修や事業者・介護者のサポートを行っている。

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