「親の介護をしたくない……そう思う自分はひどい人間なんじゃないか」。そんな罪悪感を一人で抱えていませんか?
その気持ちは親を大切に思っていないわけでなく、心や生活に余裕がなくなっているサインかもしれません。
本記事では、親の介護をしたくないと思う理由や罪悪感への向き合い方、負担を減らす方法をケアマネジャーが解説します。
<さとこさん(仮名)46歳>
隣の市に住む75歳の母は、足腰が悪く動きが不自由です。最近では、自分でできない家事や買い物、通院など、何かあるたびに「来てほしい」と連絡が来るようになりました。
私自身もフルタイムで働いており、夫と小学生の子どもとの生活もあります。週末に母のもとへ行くたびに家事や育児が後回しになり、夫との関係もぎくしゃくしてきました。
一人っ子なので頼れる兄弟もいません。
母のことを大切に思う気持ちはあります。でも「もう介護したくない」「なぜ自分だけ」と思ってしまうことがあり、そんな自分がひどい人間に思えて、罪悪感でいっぱいです。
いっそ介護を放棄してしまいたいと思うのは、やはり最低な考えですか?
親の介護をしているとき、「もう介護したくない」と考えてしまうことがあってもおかしくありません。
そう考えてしまうのは、親を大切に思っていないからではなく、介護による負担が大きくなり、心や生活に余裕がなくなっているサインの可能性があります。
「親の介護をしたくない」と感じてしまう理由には、一般的に以下のようなことが影響していると考えられます。
親の介護に費やす時間が多くなると、仕事や自分の生活に影響が出やすくなります。
フルタイムで働きながら、親の通院に付き添ったり家事を手伝ったりすることは簡単ではありません。自分の家庭も両立しなければならないのであれば、なおさらです。
親の介護で仕事を休みがちになる、夫や子ども・友人との時間が減る、趣味の時間を確保できない、などという事態が続けば精神的なつらさが積み重なってしまいます。ストレスにより「介護したくない」と感じることが多くなっても不思議はないでしょう。
介護と仕事、そして家庭の両立はとても大変です。自分の生活を守るためには無理をしないことが大切です。
親の介護では、体力やお金の面でも負担があります。車椅子への移乗や夜間のおむつ交換、入浴介助などで体力・気力が必要となることは想像できますが、相談者のように離れて暮らす親の家へ頻繁に通い、買い物や家事を担うこともとても大変です。
また、介護にはお金もかかります。介護に必要な福祉用具を購入したり、電車代・ガソリン代などの交通費がかさんだりすると、「自分ばかりお金の負担している」と不満を感じ、親の介護が重荷になってしまうこともあります。
兄弟姉妹がいれば分担して親の介護ができますが、一人っ子の場合は誰にも相談できず、「自分がすべてやらなければ」と重圧を感じてしまう方も少なくありません。
仕事や家庭、介護のバランスがとれなくなることで精神的なストレスも大きくなり、「親の介護をしたくない」と感じてしまうこともあります。
「親の介護をしたくない」と感じる理由には、親子関係が影響しているケースもあります。過去の確執やわだかまりによっては、「なぜ自分が介護しなければいけないのか」と思ったとしてもおかしくありません。
関係性が悪い親の介護では、精神的な負担やストレスがより大きくなってしまいます。
親に介護が必要な状態になったとき、「身内のことは身内で担うものだ」と考える方はきっと少なくないでしょう。
しかしそんなことはありません。必ずしも身内がすべてを担う必要はなく、「親の介護をしたくない」と思ったとしても罪悪感を抱く必要はないのです。
その理由は主に3つです。
ひと昔前、何世代もがひとつ屋根の下で一緒に生活していた頃であれば、高齢者の介護を家族で担うのは当たり前だったかもしれません。
しかし核家族化が進んだ現在では、介護を巡る状況も変わり、以前よりも家族による介護が難しくなっています。
無理をして介護を続けると、思わぬ事故を起こす可能性があり危険です。事故を防ぐためにはプロの力も借りましょう。素人が自己流で介護するよりも安全です。
家族や誰か一人の力だけで介護をするには限界があります。罪悪感を抱かずに、介護サービスの力にも頼ってください。
親の介護を一人で抱え続けると、心身ともに疲れ切ってしまい、もう介護したくないと感じるほど追い詰められることがあります。大切なのは、自分だけですべてを背負わず無理をしないことです。
以下を参考に、ご自分の状況に合った介護の体制を整えましょう。
親の介護で悩んだら、まずは地域包括支援センターへ相談しましょう。地域包括支援センターは、高齢者の生活や介護の悩みを相談できる公的な窓口で、社会福祉士や主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されています。
要介護認定の申請や介護サービスの利用に向けての支援、仕事との両立に関する相談もできるため、親の介護が始まったら一人で抱え込む前に活用するとよいでしょう。
介護の負担を減らすためには介護サービスの力も借りましょう。介護サービスを利用することに対して「親の介護を他人へ任せるなんて……」と後ろめたさを感じる方もいますが、介護のプロに任せることは結果的に親のためにもなります。
介護サービスには、以下の種類があります。
| 自宅で受ける | ・訪問介護 ・訪問入浴介護 ・訪問看護 ・訪問リハビリテーション ・居宅療養管理指導 |
|---|---|
| 施設に通う | ・デイサービス ・デイケア |
| 施設に宿泊する | ・短期入所生活介護 ・短期入所療養介護 |
| 施設に入居する | ・特別養護老人ホーム ・介護老人保健施設 ・特定施設入居者生活介護 ・介護療養型医療施設 ・介護医療院 |
| 福祉用具やリフォーム | ・福祉用具貸与 ・特定福祉用具販売 ・住宅改修 |
| 地域密着型サービス |
訪問 通所 通い・訪問・泊り 入居施設 |
自宅で介護や生活支援を受ける訪問介護、施設に日帰りで通うデイサービス、短期間施設に宿泊するショートステイなど、サービスごとに特徴があります。
介護サービスを利用するには、まずは要介護認定を受けましょう。それからケアマネジャーに相談し、ご本人・ご家族の希望や状況に合わせたケアプラン(介護サービスの計画書)を作成してもらいます。
介護サービスは所得に応じて1〜3割の自己負担で利用できます。
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親の介護では、特定の家族に負担を集中させないことが大切です。兄弟姉妹で介護の役割を分担し、一人っ子の場合は頼れる親族に協力を求めるとよいでしょう。
離れた場所に住んでいたり仕事が忙しかったりするなど、誰もが直接的な介護をできる状況ではないかもしれません。その場合は、月に数日だけ来てもらう、介護費用を多めに負担してもらうなど、それぞれができることを見つけてください。
「親の介護が私ばかりで不公平」と感じている方はこちらの記事も参考にしてください。
要介護度が重くなるほど、介護にかかる時間や負担は増える傾向があります。介護サービスや親族の協力を得てもなお負担の重さに悩むようであれば、施設への入居も選択肢の一つです。
入居施設にはさまざまな種類があり、それぞれに異なる特徴があります。早めに情報収集しておくことで、必要になったときに慌てず対応できるでしょう。
施設を利用しても親を見捨てるわけではありません。無理強いはよくありませんが、安心して過ごしてもらうことで、結果的には親の生活を守ることにもつながります。
主な老人ホームや高齢者住宅の種類は以下です。
| 特別養護老人ホーム(特養) | 低所得でも入居しやすい公的施設。入居待ちが発生しやすい |
|---|---|
| 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目的とする公的施設。リハビリや医療的ケアを受けられる |
| 介護付き有料老人ホーム | 24時間体制の介護があり、施設により設備・サービスなどに差が出やすい |
| 住宅型有料老人ホーム | 施設による介護サービスはなく、必要に応じて外部の介護サービスを利用する |
| グループホーム | 認知症の診断を受けた方が入居する施設。少人数で生活を送る |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 見守りと生活相談のサービスがあり、比較的元気な状態の方に向けた賃貸住宅 |
「親の介護をしたくないから」という理由だけで、介護の放棄はできるのでしょうか。
民法第877条では、家族の扶養義務について以下のように定められています。
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
引用:G-GOVポータル「民法」
直系血族とは、父母・祖父母・子どもなどを指し、扶養とは生活を支えるための経済的な援助を意味します。親への支援は必要ですが、自分の生活を維持できる範囲で行うものとされています。
しかし、介護が必要な親を放置し、命や健康に危険が及ぶ状態にした場合は、保護責任者遺棄罪などに問われる可能性があります。
介護放棄したくなるほどに悩んだときは、一人で抱え込まず地域包括支援センターや自治体の窓口、ケアマネジャーなどへ早めに相談しましょう。
親の介護に悩んでいる方の中には、「自分が冷たい人間なのではないか」「介護から離れたら親を見捨てることになるのでは」と罪悪感を抱える方もいます。
ここでは、「親の介護をしたくない」という悩みに関するよくある質問にお答えします。
介護放棄とは、必要な介護や世話をせず、親の生活や健康を悪化させる行為です。介護施設では専門スタッフによる見守りや適切なケアを受けられるため、親を見捨てることにはなりません。
家族が直接介護を担わなくても、介護のプロに任せることで親の健康と安全は守られます。無理を重ねてご自分が限界を迎える前に、施設への入居を検討することも大切です。
介護サービスを拒否する背景には、「まだ自分には必要ない」「人の世話になりたくない」といった不安や抵抗感があることがほとんどです。まずはご本人のほんとうの気持ちに耳を傾けてみましょう。
無理に説得しようとせず、ケアマネジャーや相談員に相談することもおすすめです。
親との関係性が介護に影響することは珍しくありません。過去の関係性が悪かったり、親に対するわだかまりなどがあったりする場合、介護に強い抵抗を感じるのは自然なことです。
「親だから介護しなければ」と自分を追い込まず、介護サービスを活用するなど適切な距離感で親を支える方法を探してみましょう。
親の介護は一人で背負わず、兄弟姉妹で分担することが理想です。しかし実際には、暮らしている場所、仕事、家庭、経済的な都合などで直接的な介護が難しいケースもがあります。
兄弟姉妹が介護に協力的でないときは、実態を伝えるために日々の介護の詳細や費用負担を書き出したうえで、話し合いの場を設けましょう。「できること」に目を向ければ、それぞれが担える役割があるかもしれません。
話し合いが難しい場合は、ケアマネジャーなど第三者へ相談することも有効です。
「親の介護をしたくない」と感じることは、親を大切に思っていないからではありません。心や生活に余裕がなくなっているサインであることがほとんどです。
その気持ちを一人で抱え込み続けると、やがて心身ともに限界を迎えてしまいます。介護サービスや地域包括支援センターなど、頼れる存在は必ずあります。まずは相談することから始めてみてください。
あなたが無理をしないことが、結果的に親を守ることにもつながります。
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