「親の介護が私ばかりで不公平……」「兄弟が何もしてくれない」と、一人で介護を抱え込んでいませんか?
その孤独感や怒りは、決してわがままではありません。親と同居している、または近くに住んでいるというだけで介護の負担が増えているとしたら、その不満は当然のものです。
本記事では、兄弟姉妹と無理なく負担をシェアする方法や、頼れる外部サービスなどについて解説します。
<はるこさん(仮名)54歳 女性>
母が一人で暮らす実家まで、車で15分の距離に住んでいます。兄は車で1時間の場所に住んでおり、要介護2の母の介護はほぼ私だけが担っています。
兄に協力を求めても「仕事が忙しい」と言われるばかりで、費用も時間も私だけが負担している状況です。どうすれば公平に分担できますか?
親の介護を一人で抱え込むのはつらいですよね。「なぜ私ばかりが…」と不公平感や孤独感を抱いてしまうこともあるでしょう。
では、なぜ介護の負担が偏りやすくなるのでしょうか。4つの主な原因について解説します。
「近くにいるから」という理由だけで、親の介護のほぼすべてを一人で担っているケースは少なくありません。相談者もおそらくそのような状況でしょう。
実際、日々の通院の付き添いや買い物、緊急時の対応などは、実家に近い子どもや同居している家族に偏りやすい傾向があります。
遠方に住む兄弟には介護の実情が見えにくく、負担の重さが十分に伝わっていないのかもしれません。そのため、「近くにいるのだから任せておけば大丈夫」と、介護を押し付けられるような状況になりがちです。
「親の介護は長女や嫁が担うもの」といった固定観念から、特定の人に負担が集中するケースもあります。
本来、介護は家族全体で支えるものです。しかし、「女性だから」「嫁だから」という固執した考えから責任が一人に集中してしまい、介護の負担が不公平になることがあります。
兄弟はそれぞれ収入や生活環境が異なります。そのため、「時間に余裕のある人が介護をするべき」という空気が生まれやすくなります。
家事や子育てで忙しくても「近くにいて時間がありそう」と見なされてしまい、介護の負担が偏るケースは少なくありません。
また、「お金は出すから介護は任せる」と金銭的な援助はあるものの、日々の介護を押し付けられているように感じることもあります。
「私ばかりが介護している」と感じる理由には、自分一人で頑張りすぎているケースもあります。「家族なのだから自分が支えなければ」と強く思うほど、実は無理を重ねているのかもしれません。
親の介護を一人で抱え込み続けると、ご自身の健康や生活、家族関係などに対してリスクが生じる危険があります。
ここでは、親の介護を一人で抱え込むことで生じるリスクについて解説します。
親の介護を担うことは、精神面・体力面ともに大きな負担になり得ます。「自分がやらなければ」と一人で無理を重ねるほど、疲労やストレスが蓄積し、心身の不調を招くリスクがあります。
また、介護する側が倒れてしまうと、要介護者である親の生活も立ち行かなくなり、共倒れにつながる可能性もあります。
親の介護では、「兄弟が介護に協力的ではない」「私ばかりが親の介護をしている」という不満を抱えている方も少なくないでしょう。
しかしその不満を抱え込んだままでいると、兄弟との関係が悪化するおそれがあります。いずれは耐え難い怒りに発展し、冷静な話し合いすらできなくなってしまうかもしれません。
兄弟や家族との関係が悪くなる前に、お互いの不満や今後の方針を話し合うことが大切です。
要介護度が重くなると、介護にかける時間も長くなる傾向があります。場合によっては夜間の介護が必要になることもあり、心身の疲労から仕事に影響が出る可能性もゼロではありません。
介護に専念するために介護離職するという選択もありますが、退職によって介護の時間を確保しやすくなる一方、安定した収入を失ってしまいます。
また、希望通りの再就職ができない、閉鎖的な環境により心身の不調につながるといったリスクもあります。
親の介護で「私ばかり負担している」と感じる状況は、できるだけ早く解消することが必要です。
ここでは、親の介護で「兄弟間の不公平感」を減らすための話し合い方について、具体的に解説します。
「介護を一人で担っている人」と「関わりの少ない兄弟」とでは、介護負担の重みに関する捉え方も異なります。実際に介護を担っている人の大変さは、関わりの少ない兄弟には伝わりにくいものです。
関わりの少ない兄弟に正しく伝えるためには、具体的に書き出すことでイメージしてもらいやすくなります。
たとえば、日々の介護の詳細、通院の付き添いの回数、介護にかかる費用などです。
感情だけで「大変だ」と訴えても伝わりにくいため、介護の実態を見える化することで、建設的な話し合いがしやすくなるでしょう。
兄弟間で介護の負担を分け合うときには、「できないこと」ではなく「できること」に目を向けましょう。
たとえば、遠方の兄弟でも、週末の見守りや役所手続きなどの一部であれば担えるかもしれません。
介護にまつわる作業を細かくリスト化しておくと、それぞれの役割を決めやすくなり、兄弟間の不公平感も軽減しやすくなるでしょう。
以下は介護の詳細や役割を担える人をまとめた表の一例です。
| 役割 | 主な内容 | 役割を担える人 |
|---|---|---|
| 身体介護 | ・通院の付き添い ・食事・入浴・排泄の介助 ・見守り など |
・親の近くに住んでいる ・時間を確保しやすい |
| 金銭的なサポート | ・介護サービス費 ・消耗品代 ・施設の入居費用 など |
・経済的に余裕がある |
| 事務手続き | ・介護保険の申請 ・役所や病院との連絡 ・書類管理 など |
・平日に動ける |
| 心の支え | ・定期的な連絡 ・親の話し相手 など |
・電話やビデオ通話なら誰でもできる |
仕事でなかなか時間をとれないときには介護休業などの制度を利用できます。3回に分けて最大93日まで休業できるため、兄弟にもぜひ活用を勧めてください。
兄弟間での話し合いで解決できないときは、ケアマネジャーなどの第三者を交えることも有効です。中立的な立場の専門職が入ることで感情的な衝突を避けやすくなり、冷静な話し合いがしやすくなります。
ケアマネジャーに相談すると、介護のプランを立案してもらえたり、すでにあるケアプランを見直してもらえ、より現実的な負担の軽減も期待できるでしょう。
介護では「誰が費用を負担するのか」も大切なポイントです。ここでは、介護費用を捻出するときの考え方について解説します。
親の介護にかかる費用は、親自身の年金や貯蓄から出すことが基本です。
親に対してお金の話は切り出しにくいものですが、できるだけ早い段階で資産状況を確認し、介護費用を長期的にシミュレーションしておくとよいでしょう。
親の資産だけで介護費用をまかなえない場合は、不足分を誰がどの程度負担するのかを事前に決めておくことが大切です。
家族で均等に負担するのが理想かもしれませんが、余剰資金の程度はそれぞれで異なります。あらかじめ費用負担のルールを決めておくことで、兄弟間での将来的なトラブルを防ぎやすくなるでしょう。
介護の手間と費用負担のバランスを取ることで、兄弟間の不公平感を減らしやすくなります。
親と同居している人、近くに暮らしている人、遠方に暮らしている人など、兄弟の状況はそれぞれ異なり、収入や余剰資金も違うものです。
そのため、介護を多く担う人は費用負担を軽くし、反対に介護への参加が難しい人はお金を多めに負担すれば、ある意味で兄弟の負担が平等になります。
親の介護はいつまで続くか予測が難しいものです。公益財団法人生命文化センターの調査によると、介護の期間は平均すると4年7カ月、10年以上という方も15%近くいます。
家族だけで介護を続けようとするといずれ限界を迎えてしまう可能性があるため、プロの手を借りながらゆとりある介護をすることが大切です。
利用できるサービスは大きく分けて以下の3つです。
介護保険サービスにはさまざまな種類があり、上手に活用することで介護の負担を大きく減らせます。
在宅介護で利用できる主なサービスは以下です。
| 訪問するサービス | ・訪問介護 ・訪問看護 ・訪問入浴介護 ・訪問リハビリテーション |
|---|---|
| 通いのサービス | ・通所介護(デイサービス) ・通所リハビリテーション(デイケア) |
| 宿泊するサービス | ・短期入所生活介護(ショートステイ) ・短期入所療養介護(ショートステイ) |
| その他のサービス | ・福祉用具貸与 ・特定福祉用具販売 ・住宅改修 |
介護保険サービスは、訪問・通い・宿泊などさまざまなサービスを組み合わせて利用でき、複数を利用することで介護の負担を軽減しやすくなります。
たとえば、訪問介護やデイサービスを利用すると身体介助や家事の負担を軽減でき、デイサービスやショートステイの利用中はご家族が休息する時間を確保できます。
ご本人とご家族に合った支援を受けるためには、ケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成してもらいましょう。
介護保険サービスは所得に応じて1〜3割の負担で利用できるため、費用の負担を抑えやすい点も特徴です。
介護保険サービスを利用するには、市区町村で申請を行い、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定の流れは以下の記事を参考にしてください。
介護保険で対応できないことは、保険外の民間サービスの活用がおすすめです。
介護保険は公的なサービスのため、できることには制限があります。たとえば、ペットの世話や庭の草むしり、外食への付き添いなどはサービスの提供ができません。
必要に応じて、家事代行や見守り、配食サービス、介護タクシーなどを利用すると、ご家族の介護負担を減らすことにつながります。
ただし、費用は全額自己負担となるため、使い過ぎには注意が必要です。
在宅介護を続けていると、いずれは要介護度が重くなったり認知症の症状が進んだりする可能性があります。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、在宅介護で半日以上の時間がかかっている人は、要介護3で5割を超え、要介護5では8割以上です。
実際に在宅介護が困難になってからではなく、施設の情報収集は早めにしておいたほうが安心でしょう。
主な老人ホームや高齢者住宅の種類は以下です。
| 特別養護老人ホーム(特養) | 原則要介護3以上が対象。費用が比較的安く、終身利用できる公的施設 |
|---|---|
| 介護老人保健施設(老健) | 病院退院後などのリハビリを目的とし、在宅復帰を支援する公的施設 |
| 介護付き有料老人ホーム | 介護スタッフが24時間常駐し、要介護度が高くても住み続けやすい施設 |
| 住宅型有料老人ホーム | 生活支援が中心で、必要に応じて外部の介護サービスを利用する施設 |
| グループホーム | 認知症の方が少人数で共同生活し、自立を支援する施設 |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 見守りと生活相談のサービスがある賃貸住宅 |
とくに特別養護老人ホームは地域によって入居待ちが発生しているため、早い段階で申し込みや見学を進めておくと安心です。
親の介護では悩むことも多いでしょう。ここでは、親の介護の分担に関するよくある質問に回答します。
遠方に住んでいると毎日の介護は難しいですが、介護費用の分担や施設探し、行政手続きなどを担ってもらうことはできます。また、定期的に帰省して介護を交代してもらうのもよいでしょう。
「何をしてほしいか」を具体的にリスト化してから兄弟間で話し合うと、より協力を得やすくなる可能性があります。
親の介護について兄弟が話し合いに応じないときは、公的な相談窓口に頼ることがおすすめです。たとえば、地域包括支援センターでは介護の悩みを相談でき、必要に応じて関係機関につないでもらえます。
また、ケアマネジャーが間に入って家族会議を調整してくれるケースもあり、第三者が入ることで冷静に話し合いやすくなります。
介護を拒否する背景には、「他人を家に入れたくない」「見捨てられるのでは」といった不安があるのかもしれません。たとえばデイサービスを拒否しているなら、まずは見学や短時間の利用からスタートするなど、お試し感覚で始めてみることがおすすめです。
「自分のためにサービスを利用してほしい」と率直に伝えることで、親が受け入れてくれる可能性もあります。
また、医師やケアマネジャーなどの信頼できる第三者から説明してもらう方法もおすすめです。
民法では、子どもは親を扶養する義務があると定められています。扶養義務は主に経済的な援助を指すため、子どもが身体介護まで背負わなければならないわけではありません。
ただし介護放棄をして、親が怪我を負ったり健康被害が出たりした場合は罪に問われる可能性があります。
家族だけで抱え込まず、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しながら、無理のない支援方法を考えましょう。
「私ばかり親の介護をしている……」という不満は、いずれ心身の不調や介護離職、兄弟姉妹関係の悪化につながるおそれもあるため、早めに対処することが大切です。
まずは介護の実態を見える化し、兄弟それぞれが担える役割を話し合いましょう。感情的になりやすい場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターなど第三者の力を借りることも有効です。
介護保険サービスや民間サービスを上手に活用することは、決して「手を抜く」ことではありません。長く介護を続けるために必要な選択です。
今回の相談者であるはるこさんは、「近くにいるから介護を一人で背負っている」という状況でした。このようなケースこそ、外部の支援を積極的に取り入れることが、自分と親の両方を守ることにつながります。
無理なく介護を続けるためにも、「家族だけで支える」という考え方にこだわりすぎないようにしましょう。
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