訪問介護の利用者さんにパーキンソン病を患っている男性がいます。
妻を怒鳴りつけてしまう亭主関白な夫に対して、妻はちょっとした仕返しをしているようで……?
「その昔、男性優位が当たり前だった時代は“女は3歩下がって、男のあとをついてくるもの”と言われていたのよ」。女性の利用者さんから、こんな話を聞くことがあります。
戦前や戦時中は女性の働き口がほとんどなく、結婚は親同士が決めた、よく知らない相手とするものでした。そして祝言をあげたあとは、「産めよ、殖やせよ」と地域や社会に急き立てられたそうです。
そのため、「自己実現を考える間もなく、家事や育児に専念するしかなかった」と、我慢しながらも日々やりがいを見つけ、家事・育児、さらには義両親のお世話までがんばってきた方が多いように思います。
女性の利用者さんたちは“亭主関白”の話になると大盛り上がりで、皆さんのテッパンネタは「困ったうちの亭主」。おしゃべりする表情は実にイキイキしています。
こちらの男性利用者さんはパーキンソン病です。80歳を過ぎて発症したのですが、「病院なんて行かなくても気合で治す!」と言っていたそうです。
パーキンソン病の症状は人それぞれで、自立した生活ができる方から、突然体の筋肉が動かしにくくなり固まってしまう方までいます。
早めに気づいて治療やリハビリをすれば、進行を遅らせられることもあるのですが、この利用者さんは症状に気づいても特に何もせず、通院しないまま症状がどんどん進行してしまったのです。
大変なのは、傍でお世話をする奥さま。何せ旦那さまはわがままな亭主関白。体がこわばって動けなくなると「おーい!」と大声で奥さまを呼び、来るのが遅いと感じたら「遅い!」とまた怒鳴ります。
お宅にお邪魔するたびにヒヤヒヤしますが、奥さまはいつも笑みを浮かべて、ひょうひょうとされています。
昔はもっとヤンチャだったようで、「これまでの苦労に比べたら大したことない」とのこと。それから「たまにね、意地悪してあげるの。動きが止まったときに隠れて見ていたりね」と、奥さまは満面の笑みです。
ちょっとした仕返しをしながら、楽しく介護しているようでした。
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